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80 高知論叢 第95号 本稿においては(特にことわらない限り),老人福祉法及び介護保険法において規定,制度化され,ペイドワークとして有償化され,かつ介護・介助に特化した専門職が行うものを「介護労働」とし....

80 高知論叢 第95号 本稿においては(特にことわらない限り),老人福祉法及び介護保険法において規定,制度化され,ペイドワークとして有償化され,かつ介護・介助に特化した専門職が行うものを「介護労働」としたうえで,特に,高齢者ケアの中核である訪問介護(在宅介護)と介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム)や介護老人保健施設における施設介護に着目して,以下で介護労働の特質と専門性について検討する。(1)多 様 性 介護労働における特徴としてまず第 1 にあげるべきは,様々な疾病や障害をもつ要介護者の個性とニーズの多様性にしっかり向き合い対応することにある。介護の目的は,要介護者のこれまでの人生や生活暦をふまえ,その人の個性を理解し,個別のニーズを引き出すことによって,主体的な生活を継続できるよう支援することにある。様々な疾病や障害を抱える身体的・精神的状況に応じて必要な介護・介助を行い,リハビリや介護予防を行うことで諸機能の維持・回復を図るだけでなく,それを通じて主体的に食べ,排泄し,入浴し,眠るという生活を実現し,生きがいを見出しながら尊厳をもって自分の人生を続けていくことを目指す。 個性とニーズの多様性を引き出すためには,要介護者と時間をかけてじっくり向き合い,観察し,想像し,理解することが不可欠である。多様なニーズを引き出し,介護という行為に根拠を与えることは,介護する過程で,最も重要かつ必要とされる専門性であろう。また,生活の継続を図り,生活習慣を尊重していくためには,介護の内容やその方法・手順も多様であり,それぞれの介護過程には一つとして同じものはない。(2)変動性・流動性 第 2 の特徴は,介護労働における変動性・流動性である。訪問(入浴)介護を例にとれば,介護者はまず要介護者の顔色や全身状態などをチェックし,室内やベッド周りなどの環境整備を行い,その後,入浴の準備などを行う。しかし,顔色が悪い場合,まず発熱や嘔吐などの有無を調べ,必要であれば医師の診断