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介護労働の変容と財政課題89医師などの医療従事者が,①治療を目的とし,②承認された方法で,③患者本人の承諾にもとづいて「業として」行うものであり11,患者本人やその家族が医師らの指導を受けて行う場合は「業....

介護労働の変容と財政課題89医師などの医療従事者が,①治療を目的とし,②承認された方法で,③患者本人の承諾にもとづいて「業として」行うものであり11,患者本人やその家族が医師らの指導を受けて行う場合は「業として」行うものではないため,そもそも「医療行為」に該当しない。 「医療行為」の具体的内容について明確な法的定義はないが,一般的には,褥そうの処置,爪きり,痰の吸引,酸素吸入,経管栄養,点滴の抜針,インシュリンの投与,摘便,人工肛門の処置,座薬,浣腸,血圧測定,服薬管理,外用薬の塗布,口腔内の掻き出し,食事療法の指導,導尿,留置カテーテルの管理,膀胱洗浄,排痰ケア,気管カニューレの交換,気管切開患者の管理指導,点眼の23項目とされている12。特に,在宅において医療行為を受けるためには基本的に保健師や看護師による訪問看護サービスを利用することになるが,サービス利用料の低い訪問介護を利用しながら,必要に応じてホームヘルパーが医療行為を行っているのが実情である。 こうした状況に対し,当初厚生省(当時)は,医療行為は医師や看護師など一定の知識や経験を有する専門家によって行われる必要があるとし,基本的にはホームヘルパーの医療行為を否定していた13。しかし,ホームヘルパーに対する医療行為の要望は強く,1999年,総務庁行政監察局(当時)は厚生省に対し「要援護高齢者対策に関する行政監察結果―保健・福祉対策を中心として」という勧告を出した。ここでは「ホームヘルパー業務においては,医療行為に該当するものは実施不可(看護婦が実施)。医療行為は, 医師の医学的判断, 技術によらなければ人体に危害を及ぼすおそれのある行為で,具体的には,社会通念に照らして個別に判断することとされている。医療行為の範囲は,不明確であり,身体介護に伴って必要となる行為が医療行為に該当するか否かの判断は事業者により区々。(中略)事業者の中には,状況によってはホームヘルパーが行わざるを得ない等として,傷口のガーゼ交換,血圧・体温測定,軟膏の塗布,座薬11 是枝祥子〔2005〕「医療行為と介護行為」ホームヘルパー全国連絡会『介護保険見直しの中でヘルパーの役割の重要性を見つめ直す』萌文社,p. 100。12 同上。13 波川京子,前掲論文,p. 167。