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介護労働の変容と財政課題95務員行政職では141,200円(給与表 1 級 8 号俸)であるが,勤続10年目の33歳では185,800円(給与表 2 級14号俸)となり23,国の補助基準を大きく上回る。 サービスの質の向上を図るため....

介護労働の変容と財政課題95務員行政職では141,200円(給与表 1 級 8 号俸)であるが,勤続10年目の33歳では185,800円(給与表 2 級14号俸)となり23,国の補助基準を大きく上回る。 サービスの質の向上を図るためには,経験や熟練のある人材を安定的に確保する必要があるが,こうした補助額ではきわめて困難であり,結果的に市町村が多額の超過負担を負うことになる。多額の超過負担が困難な場合は,賞与や保険料負担を必要としない非常勤を雇用せざるを得ないが,非常勤・登録ヘルパーの多くは非定着型であり,経験を積み,介護技術の向上を図ることは難しく,また個々の利用者の状況やニーズを理解し,長期的に信頼関係を築くことも困難となる。2.事業費補助方式の導入とその影響 ここで,訪問介護の特徴について検討しておきたい。介護労働全般は,直接的あるいは間接的な対人援助活動であり,一般的にその援助過程を合理化・効率化することは難しく,また適切でないこともあり,労働集約的であるといえる。特に訪問介護は,介護の場(主として利用者の自宅)や介護内容,方法・手順などにおける個別性が高く, 1 件ごとに移動時間を要し,移動手段も異なることから,施設介護に比べ規模の経済性は働きにくい。 さらに,施設における介護は一般的に,施設の日課や介護者の業務に合わせてある程度定型的・画一的に行われ,また,調理,洗濯,掃除などの家事援助(生活援助)と入浴や排泄,移動・移乗などの身体介護・介助においても多くの介護者が関わるなかで,ある程度分業化されている面もある。しかし訪問介護には,より総合的で高い専門性が要求される。具体的には, 1 軒 1 軒で異なる環境,状態の住居を訪問し,個性やニーズの異なる利用者に向き合い,利用者やその家族と信頼関係を築きながら必要な介護を見極め,利用者にとって最適な方法・手順で介護・介助や生活支援を行い,利用者や家族が抱える広範な生活問題や社会関係上の課題にも目を配り,利用者の心身の状況の変化を観察し,柔軟に23 武田は当時の補助基準の妥当性について,自治体正規職員あるいは社会福祉協議会常勤ヘルパーの事例を紹介しながら,補助基準の問題点や課題を検討している。武田宏〔1995〕『高齢者福祉の財政課題』あけび書房,pp. 73-78。