096号

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保安処分に関する一考察107ず,イ案とロ案を対照しますと,治療処分について両者共通の規定としては,この一行目ですが,『第一五条第一項に規定する能力がなく,又はその能力の著しく低い者が,』云々とありまして....

保安処分に関する一考察107ず,イ案とロ案を対照しますと,治療処分について両者共通の規定としては,この一行目ですが,『第一五条第一項に規定する能力がなく,又はその能力の著しく低い者が,』云々とありまして,これは必ずしも第一五条第一項を適用する場合ではない,準備草案には『適用する場合』ということだったのですが,適用する場合には限らない,実質的に能力がなく,または著しく低いという状態にあれば,これは適用できるようにしようと,つまり準備草案よりももう少しゆるめていこうという考え方が出ているわけであります。これはイ案,ロ案共通の点でございます。こういうふうにいたしますと,そういうふうにいかないかもしれませんが,予想としては, 従来の限定責任能力と考えられたものがやや広く解せられる。いままでよりも,従来の限定責任能力よりもやや高い能力のものも自然に多少含まれてくるようになるのではなかろうかということがいわれております。しかし,必ずしもそうはならないだろうという意見ももちろんでございますが,そんな含みが多少はあるわけであります。」63「それからイ案とロ案の大きな違いは, 第一一〇条の終わりのほうに,イ案のほうは,『保安上必要があると認められるとき』ということばになっておるのでありますが,ロ案のほうはそれに相当する部分が,『その防止のため治療及び看護の処置を必要とすると認められるとき』と,こういうふうになっております。『保安上必要』ということばが法文に出ておりますと厳しい感じを与える,これを避けるべきではなかろうかという気持ちがロ案のほうに一つあるわけです。同時にイ案のほうでは,『保安上必要がある』ということばが入っていることによって,実質は治療処分をなし得る場合についてしぼりがかかってくる,要件はきびしくなるのだという説明もあるわけであります。ともかく『保安上必要があると認められる』という文言がイ案にはあって,ロ案のほうにはそれに置きかえるに『治療』,『看護』ということになります。これが全体を通じてイ案,ロ案の大きな違いというものになろうかと思います。一方は『保安』ということがやや表立っておるのに対して,ロ案のほうは『治療』,『看護』ということが表立って出ている,いずれも保安のことも考え,治療,看護のことも考えておるのでありますけれども,そこに表立った差があることになろうかと思います。」64「それからなおロ案につきましては, ロ63 法制審議会刑事法特別部会第十五回(第二日)会議議事速記録 4 頁以下。64 法制審議会刑事法特別部会第十五回(第二日)会議議事速記録 5 頁以下。