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金融ユニバーサルデザイン(下) 9商品においては,個々人の多様なニーズや目的に対応した多数の商品が存在すればするほど,多様な利用者個々人のそれぞれの満足度を向上させることができる。多様な商品が増大すれば....

金融ユニバーサルデザイン(下) 9商品においては,個々人の多様なニーズや目的に対応した多数の商品が存在すればするほど,多様な利用者個々人のそれぞれの満足度を向上させることができる。多様な商品が増大すれば,自分に合った商品や自分に適した商品を選択できる幅がより広がるからである。柔軟性は適合性を促進する。 しかし金融においては,そういうことにはならないし,実際にもそうならなかった。日本版金融ビックバンによる金融商品と金融参入の自由化で,多数の新しい金融商品が売り出されるようになり,金融商品の品揃えという点では柔軟性は進んだ。しかしそれは,金融機関がもうけるために新しい金融商品を開発し,手数料稼ぎのために目新しいものを顧客に売りつけるための柔軟性であった。老後の資金や教育資金としての安定運用を求める顧客に外貨預金を組ませたり,定期預金の満期解約に来た顧客にリスクの高い投資信託や変額年金保険などを売りつけるような,金融機関のもうけと競争のための柔軟性であった。その結果,多大な金融被害者が出て,金融トラブルが頻発したのである。金融機関は顧客の利益のためではなく,自分の利益を最大限に考えて荒稼ぎした。柔軟性は適合性を促進しなかった。それどころか適合性を阻害したのである。それは金融商品や金融サービスには,次の四つの固有の性質と特徴があるからである。 第 1 に,現物が存在し,手でさわったり目で確認したりしてその仕組みや使い方をある程度理解できる一般の有形商品とは異なり,金融商品や金融サービスは現物や実体が存在しないし,無形的性格の情報商品であるということである。その商品やサービスの中身を知るには,相手の話や説明を信じるしかないし,それを理解できる知識がなければなにもわからないことになる。販売する側からすれば,情報をそれらしく加工すれば,いくらでも製造が可能となる商品である。金融詐欺や投資詐欺が簡単にできるのもそれゆえである。 第 2 に,金融商品や金融サービスは,リスク(ケガをしたり命を無くしたり損失を被ったりするなどの可能性)が無いことが当然のこととして取引が行われる一般の有形商品とは異なり,損失の可能性としてのリスクが含まれていることを前提として取引が成りたつという特徴がある。とりわけ資産運用や資金調達にかかわる金融商品や金融サービスについてはそうである。