096号

096号 page 111/170

電子ブックを開く

このページは 096号 の電子ブックに掲載されている111ページの概要です。
秒後に電子ブックの対象ページへ移動します。
「電子ブックを開く」をクリックすると今すぐ対象ページへ移動します。

概要:
保安処分に関する一考察109を先に執行するという考え。イ案の下段は,保安処分を先に執行するが,例外的に刑を先に執行することもできるという考え方をとっております。そうしてロ案のほうは,すべて保安処分を先に....

保安処分に関する一考察109を先に執行するという考え。イ案の下段は,保安処分を先に執行するが,例外的に刑を先に執行することもできるという考え方をとっております。そうしてロ案のほうは,すべて保安処分を先に執行するという一本になっておるわけであります。刑を先に執行したほうがいいとする理由は,予算とか設備とかスタッフ等,そういうような点を考えますと,早急な整備はむずかしいので,刑を執行しつつ医療を加えて処分はできるだけ最小限度にとどめようという考えがその理由の一つにもなっております。これはすべての人がその考えを持っているという意味ではございませんが,そういう理由もそちらからは主張されております。またもっと重要なこととしては,責任主義ということから考えて,まず刑を先に執行すべきである,刑を停止すべきではないという議論がこちらに出ておりますが,これに対しては保安処分を先に執行したからといって責任主義に反するとはいえないという反論が保安処分先執行の側からあるわけであります。ことに保安処分を先に執行する立法例も相当あるのでありますから,責任主義をとりながらそういう立法もあることでありますから,そういえないのではないかという証拠としてそれをあげておるというようなことであります。 それから,対象者は大部分精神病者ではない,というのは,これは限定責任能力の者ですから精神病者はむしろ少ないのではないかというので,精神薄弱とかあるいは今後入ってくるとすれば精神病質ということになって,一般処分を先にやってみてもそんなに治療効果があがるという性質のものでもないということから,刑の執行中に治療すればいいのではないかというのが刑の先執行のほうの考えであります。これに対して処分を先に執行するというほうは,あくまで刑は正常人に対して科するもので,正常人でなければ刑罰の感銘力はないのだから,できるだけ先に治療して正常人に近づけるべきであるということがいわれております。」67 以上の第 3 小委員会長の報告の後,刑事法特別部会長が保安処分対象者の範囲について発言している。67 法制審議会刑事法特別部会第十五回(第二日)会議議事速記録13頁以下。