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10 高知論叢 第96号 第 3 に,一般の有形商品には「危ないですが,お得ですよ」という商品は存在しないが,金融商品や金融サービスにはそれ固有のものとして存在する。金融商品にふくまれている損失の可能性(リス....

10 高知論叢 第96号 第 3 に,一般の有形商品には「危ないですが,お得ですよ」という商品は存在しないが,金融商品や金融サービスにはそれ固有のものとして存在する。金融商品にふくまれている損失の可能性(リスク)は,その金融商品の利用から得られる利益の可能性(リターン)と抱き合わせの関係にあり,リスクが高ければ高いほどリターンも高くなるという相互増幅の関係(ハイリスク・ハイリターン)が成立する。このリターンにつられて大きなリスクを抱え込んでしまう誘因性が働くのである。金融商品や金融サービスにつきまとうギャンブル的性格はこれゆえである。 第 4 に,一般の有形商品には冷蔵庫を何台も必要としないなどの充足限定的性格があるのに対して,金融商品や金融サービスにおいてはそのような充足限定性はない。資金運用には自己資金が限度となるが,自己資金がなくても証拠金取引や信用取引などのように自己資金を何倍にも上回る取引が可能である。借金のための借金をするなら債務にも限度がない。 以上のことから金融商品は,金融機関にとってはとても都合のよい商品である。情報を加工してリターンを強調して売り込めば,どれだけでも手数料を稼げる商品だからである。悪質な金融機関が顧客に架空の甘い儲け話をもちかけ,損失を出させその損失を取り戻せるといってさらに大きな取引をさせ,稼げるだけ稼いで借金漬けにして放り出す「客殺し商法」や「ハゲタカ商法」が成立するのもそれゆえである。 したがって金融においては,多様な選択肢が用意されているだけではダメで,①金融商品や金融サービスの仕組みやその意味することを誰もが実際に理解できるようにすること,②その金融商品や金融サービスにふくまれているリスクを現実のものとして誰もが理解できるようにすること,③誰もが容易にリスクを許容できる範囲にとどめることができるようにすること,この三つの条件が実現されないと適合性原則が満たされたということにはならない。 適合性原則はこの三つの条件の実現を必要とするのであるが,実は,次に述べる原則 3 ,原則 4 ,原則 5 は,この三つの条件の実現を求めた原則なのである。金融ユニバーサルデザイン原則においては,原則 2 と原則 3 ,原則 4 ,原則 5 は,一体不可分な関係にある。