096号

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118 高知論叢 第96号 A 案が保安を重視することにより,対象者の範囲に絞りが掛かるとされ,逆に治療重視のB 案が対象者を広くするという,その意味では対象者に対する束縛を広げる「抑圧的」ともいいうるかもしれ....

118 高知論叢 第96号 A 案が保安を重視することにより,対象者の範囲に絞りが掛かるとされ,逆に治療重視のB 案が対象者を広くするという,その意味では対象者に対する束縛を広げる「抑圧的」ともいいうるかもしれない帰結をもたらすという,ある意味で「皮相的」な議論の対立状況であった訳であり,しかもそれが「人によって解釈及び見込みに差がある」と予測されていた。このような捉え方が,保安処分ありきの結論以外をもたらさないであろうことは,容易に予測できるといえようか85。(2)法制審議会刑事法特別部会第26回会議(昭和46年6 月22日) 第19回会議において,第一次案のうちA 案が採択され,第26回会議において,第二次参考案86が第 3 小委員会から提出された。85 なお, 議論の対象となっているA 案とB 案の該当条文は下記の通りである。A 案第110条「精神の障害により,第一五条第一項に規定する能力のない者又はその能力の著しく低い者が,禁固以上の刑にあたる行為をした場合において,将来再び禁固以上の刑にあたる行為をするおそれがあり,保安上必要があると認められるときは,治療処分に付する旨の言渡をすることができる。」,第112条第 1 項「治療処分による収容の期間は,三年とする。但し,裁判所は,必要があると認めるときは,二年ごとにこれを更新することができる。」第 2 項「前項但書の規定による収容期間の更新は,二回を限度とする。但し,死刑又は無期もしくは短期二年以上の懲役にあたる行為をするおそれのあることが顕著な者については,この限りでない。」,B 案第110条「精神の障害により,第一五条第一項に規定する能力のない者又はその能力の著しく低い者が,禁固以上の刑にあたる行為をした場合において,将来再び禁固以上の刑にあたる行為をするおそれがあり,その防止のため治療及び看護の処置を必要とすると認められるときは,治療処分に付する旨の言渡をすることができる。」,第112条第 1 項「療護施設に収容する期間は,治療処分については三年とし,禁絶処分については一年とする。」第 2 項「裁判所は,必要があると認められるときは,治療処分については二年ごとに,禁絶処分については一年ごとに,前項の期間を更新することができる。」第 3 項「療護施設に収容する期間は,どのような場合にも,治療処分については通じて七年,禁絶処分については通じて三年を越えることができない。」,第115条の 2 第 1 項「療護処分は,有罪の裁判又は第一五条第一項に定める事由による無罪の裁判とともに,これを言い渡す。但し,同項に定める事由があるため刑の請求がない場合には,療護処分だけを言い渡すことができる。」第 2 項「精神の障害により第一五条第一項に規定する能力の著しく低い者が罪を犯した場合において,その者が行為の後に同項に規定する能力を失い,その回復が著しく困難であると認められるときは,前項の規定にかかわらず,治療処分だけを言い渡すことができる。」法務省『法制審議会刑事法特別部会第三小委員会議事要録(七)』(昭和45年 9 月)914頁以下参照。86 法制審議会刑事法特別部会第二十六回会議議事速記録134頁以下。