096号

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122 高知論叢 第96号「M 幹事 採決の結果を御報告申し上げます。…第一一〇条に御賛成の委員は十五名でございます。反対の委員は八名でございまして,修正案賛成の委員が多数でございます。」96 続けて,第111条....

122 高知論叢 第96号「M 幹事 採決の結果を御報告申し上げます。…第一一〇条に御賛成の委員は十五名でございます。反対の委員は八名でございまして,修正案賛成の委員が多数でございます。」96 続けて,第111条以下採決が行なわれ,若干の修正を加えた上でほぼ原案通り可決され,第 3 小委員会担当の部分はすべて決定した。 第26回会議では,A案が「保安上必要がある」との要件が絞りになることが改めて主張されたのに対して,まさにこの点に対する危惧が保安処分反対の原因になっているとの懸念から,治療によって解決できるとの反論があり,この点が勘案されて「治療及び看護を加えなければ」との要件が付加されることとなった。 しかしながら,この会議での精神科医師のK 委員の発言でも紹介されている通り,B 案も含めた全面的な保安処分論反対が盛んになりつつあった97。「刑法学会で議論されていたA 案にしろB 案にしろ,治療と保安のどちらが主でどちらが従であるかの争いはあったが,治療と保安が両立しうることを前提としたものであった。それに対し,精神神経学会の反対論は,治療と保安は両立しない,保安を正当化する医学的根拠は存在しないというものであり,医療に対する楽観的期待に基づく刑法学界の保安処分論議に根本的な変更をせまるものであった」との指摘もある98。ただし,この時点では,刑事法特別部会において保安処分に対する全面的な反対意見が,保安処分に対する「誤解」に基づくと理解されている点に注意を要するといえよう。(3)法制審議会刑事法特別部会第29回会議(昭和46年11月22日) 第29回会議において,一応の改正案が確定した。諮問第二十号は,「刑法に全面的改正を加える必要があるか,あるとすればその要綱を示されたい」とい96 法制審議会刑事法特別部会第二十六回会議議事速記録66頁。97 1971年 6 月15日,第68回日本精神神経学会総会において,「保安処分制度新設に反対する決議」が可決された。この決議は,可とするもの446票,否とするもの 2 票,保留4票という圧倒的多数で可決されたという。青木薫久『保安処分と精神医療』(批評社,1980年)307頁以下。98 楠本孝「保安処分論議の今日的総括」『法律時報』第74号(2002年)19頁。