096号

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124 高知論叢 第96号この間に社会的な状況もいろいろ変わってまいったし,私は,法制審議会の刑事法特別部会が,刑法改正の問題を論議するその気分と申しますか,気持ちもいろいろ変化があったようにも思うのであり....

124 高知論叢 第96号この間に社会的な状況もいろいろ変わってまいったし,私は,法制審議会の刑事法特別部会が,刑法改正の問題を論議するその気分と申しますか,気持ちもいろいろ変化があったようにも思うのであります。仕事を始めました当座は,やはり新しい憲法のもとにおいて,六十年も経過した刑法をいかに新しく現代化するか,憲法と適応するように,刑法の規定をどのように改正するかということに,かなり大きな関心がはらわれてまいったように思うのであります。…… しかし,だんだんわが国の社会事情が変わってまいりまして,何やら騒然といたしてくるにつれて,ここでわれわれの取り扱います刑法改正の問題も,途中から,少しはだ合いが違ってきたという感じを禁ずることはできないのであります。それは,そういう騒然たる社会状態に対して,治安を維持するために,やはり刑法が前面にたたなければならない, そういうところから, いわば刑法の治安維持的な機能というのは,だんだんこの部会においても表面に出てまいったような気がする。……われわれの刑法を全面改正する場合に,現在われわれが審議を終了したこの案の方針に従って,全面改正を促進すべきであるかということになりますと,私は,しかりということに多分のちゅうちょを感じざるを得ないのであります。」100「G 委員 ……それから,保安処分の問題であります。私は,保安処分というのが準医療的であって,それが理想的に組織,運営されるならば結構なことであると賛成する態度をとってまいりました。しかし,今日そういう態度について反省をいたしております。準医療的な保安処分が完全に実現されるならば,けっこうだということは, 今日も気持ちは変わらないのでありますが……, そして, そういう意味で,特に治療処分の条文のあり方などについても,つまらんことを提案してご採用になったりもいたしておるのであります。しかし,保安処分の問題について,特に懐疑的になってまいりましたのは,これは精神医学の若い研究者などの意見をいろいろ聞き,それから,精神神経医学界の決議なるものをたびたび突きつけられたり,そういう人たちと議論したりしておるうちに,私の保安処分に対する考え方は,かなり大きな錯覚を前提としておったということに気づいたのであります。私個人としては,日本の精神医学界はこぞって保安処分,現にわれわれの草案が含んでおる100 法制審議会刑事法特別部会第二十九回会議議事速記録98頁以下。