096号

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保安処分に関する一考察125治療処分,禁絶処分というものを必要だとして,推進,要求しておられると信じております。精神神経医学界の理事長である中田先生などの中田試案なるものも拝見しておりましたし,その中田....

保安処分に関する一考察125治療処分,禁絶処分というものを必要だとして,推進,要求しておられると信じております。精神神経医学界の理事長である中田先生などの中田試案なるものも拝見しておりましたし,その中田試案というのは,非常に積極的な保安処分推進論に満ちておった。これは保安処分として,矯正までやったほうがいいというようなご意見も書いてあったように思うのです。ですから,精神医学の先生方は,犯罪を行なった精神障害者の精神状況から,その人が,将来犯罪的な非行を反復する危険があるというようなことを,具体的に明確に,医学的に科学的に予測して,どういうように処置,処遇をしたらいいということについての,非常にはっきりした指針をわれわれ法律家,行刑,その他保安処分を遂行する者にお示しいただけるであろうというように思っておったわけであります。ところが,これらの点について,私,よくわからないのですけども,今日,たいへん不安の念にかられておりますのは,精神医学界の決議―ことしの夏ごろに決議があったのを私どもはもらったのでありますが,その決議によりますと,現代の精神医学界は,精神障害者の将来の危険性の予測というものについて,十分人の自由を保障するということを確保するほどの確実な予測表を立てることはできない,そんな自信はないということが―学界の決議にそういうことが書いてあるのです。完全な予測を先生方はできないと言われるのに,われわれができることを前提にして,保安処分を推進していいのであろうかということが第一の私の不安であります。 第二の不安は,そういう精神障害者を,保安処分として保安施設に収容して処遇するというわけでありますが,その処遇は,治療及び看護をしてやるということに,われわれの草案ではなっておるのでありますが,そういうように拘束された状況下において,一種の刑務所の房と同じような,閉じ込められた状況における精神障害者の治療というのは,きわめて困難であるということを,さらに述べられております。現に,ある精神病の若い学者は―これは個人的に聞かされて,非常に感銘したのでありますが,従来の精神病とか精神分裂症などの治療をおもにやっている人のようでありますが,精神病院に閉じ込めて,社会から隔離して,そしておとなしくしても,それはほんとうによくなったのではないのだ,そういう人を病院から出して,社会に出すと,とたんに社会の激烈な刺激のためにくずれ去ってしまう,だから精神病の治療というのも,社会との関連,交渉を決して立ち切らないで,特に家族と