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金融ユニバーサルデザイン(下) 11 金融においては,柔軟性よりも適合性の方がより重要であるので,原則 2 は「金融における適合性の原則」と名づけておくことにする。 以上に述べた適合性原則は,1998年 4 月の....

金融ユニバーサルデザイン(下) 11 金融においては,柔軟性よりも適合性の方がより重要であるので,原則 2 は「金融における適合性の原則」と名づけておくことにする。 以上に述べた適合性原則は,1998年 4 月の金融ビッグバン導入時に,金融利用や金融取引における重要な基本原則として確立されなかった。しかしその後,消費者団体,弁護士などの法律関係者,研究者,行政官の精力的な活動や努力によって,2000年 5 月の「金融商品販売法」の成立を経て,2006年 6 月の「金融商品取引法」と「改正金融商品販売法」の成立をまって,実に 8 年もの年月を費やし,金融商品の勧誘・販売ルールの基本原則としていちおう確立されるようになった。金融商品販売法とは,違反があれば金融機関が顧客に対して損害賠償を負わなければならないことを定めた法律(民事ルール)であり,預金や一般の保険などもふくめ金融商品全般に適用される。金融商品取引法は,違反があれば金融機関に対して業務改善命令や業務停止命令を監督機関が下すことのできる法律(業法)であり,外貨預金,投資信託,株式,変額保険や年金などのリスクのある金融商品に適用される。 金融商品販売法は,金融機関に金融商品について元本割れが生じるおそれとその要因についてのリスク説明義務を負わせ,その説明がなければ元本欠損額を損失と推定して損害賠償をさせることを定めた。ただその立証責任を情報弱者である金融消費者側に残した点で問題を残した。 しかも適合性原則は法律に盛り込まれなかった。それに代わり金融機関が顧客勧誘方針の自主ルールを策定し公表することが義務づけられた。そしてその内容に適合性原則である「勧誘の対象となる者の知識,経験,財産の状況に照らし配慮すべき事項」を盛り込むことが定められた。金融商品を勧誘・販売するときに顧客の知識,経験そしてその資産状況をどのように考慮して勧誘・販売しようとするのか,金融機関にこれについての社内規定を決めさせ公表させようというのであるが,実際には有効に機能するものではなかった。 したがって不招請勧誘禁止原則も確立されなかった。不招請勧誘禁止原則とは,金融利用者が望んでいないあるいは買う意思がないのに,電話や訪問などの方法で金融商品を勧誘してはならないという原則である。これは金融利用者が詐欺や金融トラブルにあうのを防止し,その自由で自発的な意思決定や判断