096号

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128 高知論叢 第96号ような要件を満たせば強制医療が可能かとの問いを設定する議論104に見られるように,その影響が拭い切れなかったようにも思われる。(4)法制審議会刑事法特別部会第30回会議(昭和46年11月29日....

128 高知論叢 第96号ような要件を満たせば強制医療が可能かとの問いを設定する議論104に見られるように,その影響が拭い切れなかったようにも思われる。(4)法制審議会刑事法特別部会第30回会議(昭和46年11月29日) 第29回会議は,刑法全面改正の要否の審議に入ったところで時間切れになったということで,引き続き,この問題の審議から始まった。「O 幹事 第二十九回の最後に,わずかな時間をいただきまして,私は全面改正に反対するという意見を述べさせていただきました。少しばかりきょうは,その理由の一端をつけ加えさせていただこうと思うわけです。 ……まず第一に,保安処分のことにつきまして申し上げたいと思います。 これは,東京弁護士会の意思を代表するばかりでなく,私自身やはり個人としても非常に素朴な疑問を持っておったわけなのですけれども,保安処分は一体刑罰かどうかという基本の問題について疑問を持っておるわけなのです。それはもう刑罰でもない,行政処分でもない,一つの違ったものなのだといったような意見が支配的でございます。ただ,刑法と申しますと,われわれが認識している,あるいは受容してきた定義というものを,ほんとうに常識的な立場で理解すると,犯罪と刑罰との関係を規定する一つの法体系,これは刑法の最も一般的な定義だと思うのでございます。したがいまして,保安処分というものを刑法に取り入れるためには,この刑法体系の中で確かな地位を占めておるかどうかということは,やはり一つの論議の点ではないか。……憲法三一条,これの意義を受けまして第二次参考案というものが罪刑法定主義というものを全面的に打ち出した。したがって,法律の制定がなければ何人も処罰を受けないというこの考え,この考えからすると,なおやはり104 横藤田誠「強制治療システムとその正当化根拠――アメリカの憲法判例を中心に」町野朔編『精神医療と心神喪失者等医療観察法』(有斐閣,2004年)105頁以下は,「身体的自由を制限する合憲的根拠として健康権等を援用することはできないのではないか」としつつ,「強制収容制度」について「この制度を創設しなければならなかった社会の苦悩には共感できるだけに,突きつけられた課題の重さに慄然とせざるを得ない」と結ばれており,重要な指摘であると思われるが,本稿の立場からは,強制医療は医療ではなく許されないことを議論の出発点とすべきことこそが,最も重要であるということになる。