096号

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130 高知論叢 第96号お医者さんの確保それ自体がたいへん困難だ,いわんや,保安施設というがごとき特別の精神医学を専門とする人たちを雇い入れて,そして法律が掲げている目的を実施するというためには,これはも....

130 高知論叢 第96号お医者さんの確保それ自体がたいへん困難だ,いわんや,保安施設というがごとき特別の精神医学を専門とする人たちを雇い入れて,そして法律が掲げている目的を実施するというためには,これはもう実際は,日本の現状,医学界のそういう専門医の入手,そういうこと自体からとても不可能ではないか。……とにかく保安施設というものが実施された場合には,法律が考えていることと現実の問題とははっきり距離がある,間隔がある。そうすると法律のほうが先行してしまう。その施設が完備するまでに,もし努力してそういうものができ上がっても,多少時間がかかるというようなことが予想される。……ことに精神障害,これは精神衛生法では精神障害者を定義づけました条文があるわけなのですけれども,その中に,やはり部会でも,あるいは第三小委員会でも問題になりました病質者,これが一体将来どういうふうに,保安処分との関係で取り扱われていくだろうかという心配があったわけです。申し上げるまでもなく,精神病質者は,刑事の処分ではこれは能力のある者としていままでは取り扱われておったわけなのですけれども,この法律ができたことにおいて,特にそこをはっきりきめていないことから,精神病質者というものの取扱いを,刑にするか,保安処分にするか,刑と保安処分にするか,そういう場でこれはやっぱり実際の問題が起きてくるのではないか。そういうことを非常に心配しておるわけなのです。…… 私たちは,現在の刑法がこのままでいいとは実際考えておりませんが,要するに改正刑法準備草案が生まれてきた,大正十年からの作業をその成果ごとに並べて検討してみますと, 刑法改正の綱領, これはもうH 部会長みずからご指摘なさったとおり,まことに反動的な面もある。また一方,刑事学的な発展とか申されるような意味の非常にすぐれた構想もあってご承知の通り四十何項かからなっております。ここからすでに保安処分の考えが出ておりまして,その次の刑法改正予備草案,ここでもやはりこの綱領の精神をくみまして保安処分ということを考えておる。仮案がこれを引きつぎまして,ご承知のような条文ができておるわけで,この中で特に保安処分というものを非常に予防拘禁性的なとらえ方をしているのがありまして,それはもちろんこの委員会も,あるいは部会も取り入れないわけなのです。とにかくそういう保安処分に入れたら治るまで出さないのだといったような意味が含まれているわけです。……それから刑法改正綱領が出た直後の治安維持法,ここだって