096号

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保安処分に関する一考察135は二十九名でございます。」112「H 部会長 次に,『あるとすればその要綱を示されたい』―先ほど申しましたように,要綱というのは,ここでは当部会において過去八年半を費して作成いたし....

保安処分に関する一考察135は二十九名でございます。」112「H 部会長 次に,『あるとすればその要綱を示されたい』―先ほど申しましたように,要綱というのは,ここでは当部会において過去八年半を費して作成いたしました改正案をさすものとご了解願っていいと思います。したがって,その要綱は,これまで当部会において決定した案による,あるいはよらないほうがいいというご意見もあるだろうと思います。これは,前の第一段でどうお考えになったという方でも,否定された方でも,賛成なさって一向差しつかえないと思います。今回,当部会の決定した案によるべきだと,それを諮問として示すべきだとお考えの方,挙手を請います。」113「M 幹事 採決の結果をご報告申し上げます。諮問第二十号のうち,改正の要綱に関する部分につきまして,『改正の要綱は当部会で決定した案による』とすることにご賛成の委員は二十七名,ご反対の委員は一名,委員総数は二十九名で,賛成が過半数でございます。」114 この第30回の会議をもって,法制審議会刑事法特別部会の審議は終了し,改正刑法草案が決定した案となった。 特に, 保安処分に関する議論に関しては, 前回の第29回会議について指摘したことの繰り返しになるが, 強い反対意見も存在したことが分かる。ただし,その反対論の多くは,精神神経学会の決議等の「事情変更」を重視するものであり,語弊のある表現ではあるが,ある意味で「政治的判断」での反対が多かったようにも思われるのである。他方,保安処分について賛成論の側も,「刑法の中にぜひつくりたい」「治安維持の必要上保安処分が必要」とはいっていなかったとはいえようが,「今後の刑法改正における一つの眼目」と理解されていたのは否定しえないであろう。少なくとも,保安処分に関する議論の出発点では,「保安重視」の考え方と「治療重視」の考え方との対立を「イデオロギー」の対立として想定していたのであり,その点で「治安維持」の考えをまったく消112 法制審議会刑事法特別部会第三十回会議議事速記録88頁以下。113 法制審議会刑事法特別部会第三十回会議議事速記録89頁。114 法制審議会刑事法特別部会第三十回会議議事速記録89頁。