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スティーブン・リーパーさん講演会141 このように,リーパーさんは,反核平和運動に精力的に関わってこられた方であるが,中でも理事長就任後の活動で特筆されるのが,「全米における原爆展」の取り組みである。同....

スティーブン・リーパーさん講演会141 このように,リーパーさんは,反核平和運動に精力的に関わってこられた方であるが,中でも理事長就任後の活動で特筆されるのが,「全米における原爆展」の取り組みである。同展は,米国国内で原爆被害の実相を伝え,一般市民に核廃絶への理解を深めてもらおうと企画されたものである。米国は世界最大の核保有国であるにもかかわらず,その重大な危険性について市民の間で十分理解されているとはいえない。こうした状況に強い危機感を抱いたリーパーさんたちは,ちょうど大統領選挙を間近に控えた,国政への関心が高まる時期に,被爆の実相を伝えるべく,「原爆展」という形でヒロシマからメッセージを発し,草の根レベルから核兵器廃絶への世論喚起を目指す取り組みを開始したのである。 こうして,2007年 9 月から2009年 3 月までの間,原爆展が全米各地で開催された。会場では,広島から送られてきた原爆写真ポスターの展示をはじめ,被爆体験証言者が自ら被爆の実相を伝える展示会が開催された。同展を訪れた人は,被爆の悲惨さに相当な衝撃を受け,核廃絶の重要性についての深い理解が促されていった。こうした地道な取り組みに関心が集まり,当初101都市(首都及び各州 2 都市)での開催予定が,最終的には全州には及ばなかったものの,都市数については目標を上回る48州113都市での開催が実現した。さらに,同展を訪れた人の中には,自分の暮らす地域の市長に平和市長会議への加盟を求める署名活動を行ったり,原爆展や被爆体験証言を自らのホームページで発信する等,核廃絶へ向けた具体的なアクションを起こす人も登場したという。その意味で,原爆展は,米国内部で核廃絶のメッセージが確実に浸透していく契機になったといえよう。 ところで,リーパーさんが取り組みを続けている核の問題は,現在重大なターニングポイントにさしかかっている。 5 年に一度開催されるNPT(核不拡散条約)再検討会議が来年 5 月に予定されているが,そこではグローバルな核廃絶か,グローバルな核拡散かの二者択一が迫られると予想されている。それを裏付けるかのように,米国とNPT 枠外のインドとの間で「米印原子力協定」が昨年発効し,朝鮮民主主義人民共和国の核実験(今年 5 月)や中東諸国での核開発疑惑等,核の水平的拡散が懸念されている。しかし他方で,今年 4 月にチェコ・プラハで演説したオバマ大統領の核廃絶メッセージが世界的な話題にな