096号

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150 高知論叢 第96号た。なぜならば,今までは欧米の国家しか核を持っていなかったわけですが,アジアの国家が,ついに核兵器を持つようになったからです。では,その後はどうなるだろうか。もしかすると,もっと多....

150 高知論叢 第96号た。なぜならば,今までは欧米の国家しか核を持っていなかったわけですが,アジアの国家が,ついに核兵器を持つようになったからです。では,その後はどうなるだろうか。もしかすると,もっと多くの国が核を持つようになるかもしれない。このような懸念が出てきたことから,NPT というものを作ることになったわけです。 NPT は,最初から取引でした。「我々こそが核保有国。核保有国だけが核を持ちます。皆さんは,核を持たない代わりに,原子力発電とか医療といった平和利用の技術を与えます」という取引だったんです。核の保有国は,そのように取引したかったのですが,核のない国の強い要請により,第 6 条というものが追加されました。第 6 条とは,「完全な軍備縮小に関する条約について,誠実に交渉を行う」という約束でした。だから核保有国は,NPT ができた最初から,核廃絶の義務を負っていたわけです。 「核兵器を廃絶する」と約束してきたわけですが,冷戦の間は,アメリカとソ連がすべての国を抑えていたので, 誰も文句を言えませんでした。ところが, 冷戦が終わった後, 最初に開催された再検討会議が,1995年に行われました。そこでは,NPT 自体がほとんど消えかかっていたんですが, 核保有国が再度「廃絶します」と強い約束をしたため,条約が延長されました。また,2000年には,New Non-Aligned Movement(新非同盟運動)と,New AgendaCoalition(新アジェンダ連合)8)という 2 つの国家間グループが強い声明を出して,「冷戦が10年も前に終了したのだから,そろそろ核を廃絶しませんか」と主張しました。それに対して,核保有国は,「絶対,廃絶します」という明確な約束(An unequivocal undertaking to accomplish the total elimination of theirarsenals)を最終文書の中に入れました。今までの中では一番強い約束でした。もちろん,「いつ廃絶するか」という時間は限定されていないのですが,とにかく約束しました。8 ) 核兵器廃絶を目指して共同行動をとる非核保有国の連合体。アイルランド,エジプト,スウェーデン,スロベニア(後に脱退),ニュージーランド,ブラジル,南アフリカ,メキシコによって結成。グループ名称は,1998年発表の「核兵器のない世界へ ―― 新たな課題(New Agenda)の必要性 ―― 」という声明に由来している。