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16 高知論叢 第96号めることになったが,透明性の向上を求める世界の流れと逆行するものである。 金融商品取引法の目的には,「資本市場の機能の十全な発揮による金融商品の公正な価格形成等を図り,国民経済の健....

16 高知論叢 第96号めることになったが,透明性の向上を求める世界の流れと逆行するものである。 金融商品取引法の目的には,「資本市場の機能の十全な発揮による金融商品の公正な価格形成等を図り,国民経済の健全な発展及び投資者の保護に資することを目的とする。」とある。金融商品の公正な価格形成が新たに盛り込まれて,公正な情報にもとづいて金融商品の価格や金融相場が形成されることを求めたのである。しかし,金融情報そのものが誰にとってもわかりやすいこと,誰にとっても理解できることという条件が形成されなければ,金融市場は以前として特権的・専門的情報強者による不公平相場のままになる。 この簡単性の原則は,金融ハードウェアーに対しても,重要な原則となる。 金融というサービス取引が基本的に無形的性格を主としているとしても,その取引を助けるために多種多様な有形金融行為手段が使われていることについては,前述した。有形の金融行為手段とは,例えば,現金貨幣(お札やコイン),預金証書,手形・小切手,有価証券の証書,クレジットカードやキャッシュカード,電子マネー,ATM 装置(現金自動支払装置),オンライン装置,パソコンやインターネット端末,取引所や金融機関の建物,金融行政機関の建物などである。 インターネットを始めとする通信技術の発展やデジタル化の進展とともに,これらの有形金融行為手段は,多面的な取引を可能とする高度な機能を備え高速化・効率化・小型化して便利性を高めたが,他方では,操作における精密性・複雑性・難解性も拡大しているのである。 ガイドラインは「金融利用」に置き換えただけであるが,金融を簡単に直感的に利用できるようにするための,重要なガイドラインとなる。 金融のソフトウェアーとハードウェアーの設計・管理・運営においても,①不必要な複雑さを避けること,②金融利用者の予想や直感的理解に一致すること,③読み書き能力・言語能力に適合させること,④情報を重要度に基づいて配置すること,⑤利用中・利用完了後も効果的な指示や事後確認(フィードバック)を提供することなどは重要原則である。ただし④は,次の原則 4 の情報伝達の方法と重複するところもある。 これ以外にとりわけ金融利用において必要となる具体的指針があるかどうかは,今後の検討課題である。