096号

096号 page 24/170

電子ブックを開く

このページは 096号 の電子ブックに掲載されている24ページの概要です。
秒後に電子ブックの対象ページへ移動します。
「電子ブックを開く」をクリックすると今すぐ対象ページへ移動します。

概要:
22 高知論叢 第96号意なことなどでこのような失敗にならないようにすること,たとえ失敗したとしても軽微にとどまり,すみやかに回復できるものであること,そしてそれが重大なことにならないようにすることを求め....

22 高知論叢 第96号意なことなどでこのような失敗にならないようにすること,たとえ失敗したとしても軽微にとどまり,すみやかに回復できるものであること,そしてそれが重大なことにならないようにすることを求めた原則である。少し長くなるが,「金融における失敗許容範囲の原則」と名づけることにする。 ここでいう失敗許容範囲の原則とは,金融ビックバンの無責任な推進論者のいうような,リスク管理における「自己責任の原則」ではない。それとはまったく正反対に位置するリスク管理原則である。自己責任論者は,多面的多様性を無視し,複雑で難解な金融を野放しにしておきながら,わからないことの責任を一般の金融消費者や情報弱者に転嫁しようとしたからである。 失敗の事前予防ということでは,これまで述べてきた金融商品取引法と改正金融商品販売法におけるリスクやリスク要因それに金融商品の仕組みについてのわかりやすい説明と,それを平易に記載した書面交付は,金融利用者がリスクを理解しそれを許容範囲に抑えることができるようにするためにも重要である。不招請勧誘禁止も欠かせないことである。 適合性原則で示したように,金融機関が顧客の利用目的と財産の状態を考慮し,収入や資産と比較してリスクが過大になるような取引を制限することは必要である。リスク金融商品の取引については顧客の余裕資金の範囲内に抑制するよう徹底することはとりわけ重要である。 それゆえ適合性原則のところで述べたように,この原則 5 は,それ以前の原則 2 ,原則 3 ,原則 4 と一体不可分な関係にある。 失敗につながる過大な取引量をあらかじめ制限することも重要になる。証拠金取引や信用取引のレバレッジ比率(預けた現金とそれによって可能となる取引額との倍率)は制限をもうける必要がある。2006年成立の改正貸金業法では,総量規制が導入され返済能力をこえる貸し付けが禁止された。 銀行と証券会社の経営と販売商品を分離していた金融ビックバン以前の銀証分離制度は,金融ユニバーサルデザインの観点からすれば,きわめて優れた制度デザインであった。銀行やゆうちょ銀行を従来と同じように安全な金融商品を販売するところだと思って利用する顧客が今も断たない。民営化されたゆうちょ銀行についても,そのような問題が起きつつある。リスク金融商品(投資