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農業委員会の今日的役割49き役割は多く,責任も重いが,農業集落,農村社会において,農業者自身が自治的に意思決定を行なう農業委員会は,市町村とはまた違った面から,地域社会の維持に貢献できる存在であり,本稿....

農業委員会の今日的役割49き役割は多く,責任も重いが,農業集落,農村社会において,農業者自身が自治的に意思決定を行なう農業委員会は,市町村とはまた違った面から,地域社会の維持に貢献できる存在であり,本稿を通じてその一端を示してみたい。1 農業委員会の概観1-1. 農業委員会の沿革 農業委員会は,教育委員会や労働委員会などと同じく,行政機関からある程度独立した形で職務を行なう行政委員会のひとつである。行政委員会は,国,都道府県, 市町村それぞれの段階に様々なものがあるが, 農業委員会は市町村段階に置かれる行政委員会である2。農業委員会は,都道府県段階に農業会議,国段階に全国農業会議所という上部組織を持ち,系統組織を構成している。「農業委員会等に関する法律 3」(以下本稿では「法」とする)がその根拠となっている。 その沿革は,1938年の農地調整法4において設置された農地委員会に始まる5。農地調整法上の農地委員会は,市町村と道府県に置かれた。市町村農地委員会の会長は原則として市町村長とし,委員は地方長官が任命し,道府県農地委員会の会長は地方長官とし,委員は農林大臣が任命するものとなっていた6。農地調整法上の農地委員会は,今日の農業委員会のような強力な権限を持たず,自作農の創設と維持,小作関係の調整,農地の交換分合等の事務についての調査,審議,斡旋等が任務であった。第2次世界大戦後,農地委員会は根本的に改められ,農地改革の実施過程を担う中心的機関として位置づけられた。委員は階層別(地主・小作・自作)に選挙によって選ばれ,農地改革の目的である自作農の創設と耕作権の擁護を実現すべく,行政上の権限を持ち,小作地の買収と売り渡し2 地方自治法(昭和22年 法律第67号)180条の 5 第 3 項。3 昭和26年 3 月31日法律第88号。4 昭和13年 4 月 2 日法律第67号。5 関谷俊作『日本の農地制度 新版』(2002年 農政調査会)p. 99。農業委員会の沿革および概要については,同書のほか,関谷俊作『日本の農地制度』(1981年 農業振興地域調査会),『体系農地制度講座』(1994年 全国農業会議所)および全国農業会議所のウェブサイトを参照。6 農地改革記録委員会『農地改革?末概要』(1977年 御茶の水書房(復刻版))p. 92。