096号

096号 page 81/170

電子ブックを開く

このページは 096号 の電子ブックに掲載されている81ページの概要です。
秒後に電子ブックの対象ページへ移動します。
「電子ブックを開く」をクリックすると今すぐ対象ページへ移動します。

概要:
農業委員会の今日的役割793-2. 農地法の改正と農業委員会に求められる役割 2009年 6 月に,農地法および関連法が改正された32。第 1 条の目的規定を改めたことからも明らかなように,大きな改正であったが,今回の....

農業委員会の今日的役割793-2. 農地法の改正と農業委員会に求められる役割 2009年 6 月に,農地法および関連法が改正された32。第 1 条の目的規定を改めたことからも明らかなように,大きな改正であったが,今回の改正が農業・農村にどのような影響をもたらすか,改正内容について詳細に検討する33とともに,施行段階を注視していく必要がある。改正の主な内容は,目的規定における耕作者主義の排除,権利移動統制の緩和,転用統制の強化,遊休農地対策(経営基盤強化法から農地法へ移行)等である。以下,今回改正が農業委員会に与える影響について,若干の検討を行なう。 改正法において,貸借による権利移動が一定の条件のもと自由化された(改正法 3 条 3 項)。これまでは,農作業常時従事要件あるいは農業生産法人に関する諸規定等によって,「自ら農作業に常時従事する生活を営む地元農家を,農地に対する権利主体として保護」し,「「羽織百姓」や,村外で経営だけを差配する者」を排除してきた34が,今回の改正では,農地の適正利用等の規制はあるが,個人については農作業常時従事要件,法人については法人形態の制限等を排して,農業委員会の許可により,農地の利用権を取得できるものとしている。これにより,貸借については新たな秩序形成がなされることになったと見ることができる。借りる側は「誰でも」「どこでも」よく,これまでの地域的な縛りがなくなったということである。農業委員会は,どこの誰かよく知らない参入希望者に対して,「地域の農業における他の農業者との適切な役割分担の下に継続的かつ安定的に農業経営を行うと見込まれ」れば,利用権設定を認め32 「農地法等の一部を改正する法律案」として第171回国会に出され,平成21年 6 月17日に可決,成立した。平成21年法律 6 月24日法律第57号。農地法,農業経営基盤強化促進法,農業振興地域の整備に関する法律および農業協同組合法の一部が改正された。以下本稿では改正後の農地法について「改正法」とする。33 今回の農地法改正について,原田純孝「農地所有権論の現在と農地制度のゆくえ」戒能通厚・原田純孝・広渡清吾編『渡辺洋三先生追悼論集 日本社会と法律学』(2009年日本評論社),「自壊する農地制度―農地法改正法律案の問題点」(法律時報2009年 5 月号)および「農地法「改正」で日本農業どうなるか」(世界2009年 6 月号)を参照。農地制度全般の今日的状況について,『いま農地制度に問われるもの』(農業法研究44号 日本農業法学会 2009年 農文協)を参照。34 楜澤能生「「農地改革」による戦後農地法制の転換」(農業法研究44号 2009年)p. 52。前掲注33参照。