096号

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80 高知論叢 第96号ることができるとされている(改正法 3 条 3 項 2 号)。許可した結果,支障が生じれば許可を取消す(改正法 3 条の 2,2 項)ことで,見込み違いがあった場合に事後的に修正できることにはなっ....

80 高知論叢 第96号ることができるとされている(改正法 3 条 3 項 2 号)。許可した結果,支障が生じれば許可を取消す(改正法 3 条の 2,2 項)ことで,見込み違いがあった場合に事後的に修正できることにはなっているが,いったん許可したものを取り消すのは容易なことではない。農業委員会が個別の契約について具体的に判断を下すということは,委員会がある意味では「地域の土地利用の公共性の担い手」であることを示す機会を得られたということにもなるが,公平・公正な判断を担保する制度的な裏づけが必要である。今回の改正では標準小作料制度(農地法23条)も廃止されたが,これにより賃貸借により利用権を設定する際の「適正」な賃料を「判断」する根拠を失ったものといえる。標準小作料の廃止の影響はそれだけではない。委員会が標準額を決定し,それに寄らしめることで,賃料という一つの要素ではあるが,地域全体の農地利用秩序を形成していたのであるが,そのような秩序形成力を失ったということになる35。農業委員会は,市町村という地域内に存在し,地域内の秩序形成を,地域における判断基準で行なっている。今回の改正は,地域主義的な縛りに支えられ,農業委員会によって形成されてきた農地利用秩序に異質な契機を持ち込んだといえ,多くの問題の発生が危惧される。 今回の改正では,遊休農地対策の一連の規定が農業経営基盤強化促進法から農地法に移行した(改正法30条以下)。これまでは,市町村の経営基盤強化基本構想の枠内で遊休農地対策を行なっていたのであるが,改正法では,区域内の全ての農地について,農業委員会は年に 1 回以上,これを調査し,必要な指導を行うこととなっている(改正法30条以下)。高知県の実情から考えると,これは極めて実現困難な規定である。耕作放棄地を農地でなくするということが現実的な対応策となるのかも知れないが,そうなると中山間地域の農地は急速に縮小していくことが予想され,地域の崩壊に直結する可能性が高い。遊休農地について,回復可能なものとそうでないものとを峻別し,回復可能な農地を守っていくものとも見られるが,その判断もまた,農業委員会に任されるのである。35 改正法52条で農業委員会は農地の借賃等の状況についてその動向を調査,分析し,必要な情報提供を行うものとされているが,提供する情報に基づいて借賃の減額勧告等を行うわけではない。