096号

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84 高知論叢 第96号の批判において,そもそも保安処分が実現しなかったにも関わらず,医療観察法が成立した理由を検証しておくことは,現在においても同法の廃止を求める強い批判4が存在することに鑑みて,なお重要....

84 高知論叢 第96号の批判において,そもそも保安処分が実現しなかったにも関わらず,医療観察法が成立した理由を検証しておくことは,現在においても同法の廃止を求める強い批判4が存在することに鑑みて,なお重要な課題であるように思われる。 その際に,確かに同法の成立した社会的背景は一つの重要な論点であり,また,保安処分が成立しなかった当時の社会的背景もその時代固有のものとして重要であるが,特に現在の重要な課題は,保安処分に関する議論の「限界」がどこにあったのか,保安処分に関する議論は同法の審議過程において克服されたのかという点にあると思われる。 本稿では,この課題の解明の出発点として,保安処分が精力的に議論されたかつての刑法改正作業での法制審議会刑事法特別部会における議論状況を確認することとしたい。この確認作業によって,医療観察法が「保安処分」と同視しうるものなのか否か,「保安処分」と同視しうるとすれば,その理論的な問題は何処に存するのかを改めて確認することを目指している。ただし,紙幅の都合もあり,今回はかつての法制審議会刑事法特別部会の議論状況の確認に留め,医療観察法との連続性の検証は他日を期すこととしたい。2 刑法改正作業の経過 冒頭で示した通り,本稿では改正刑法草案作成の審議過程における議論を確認することにより,(将来にその問題性を残すこととなったと思われる)その限界を確認することが課題であるが,本章ではまず,戦前から続く一連の刑法改正作業を概観することで,本稿で検討する刑事法特別部会の位置を確認しておきたい。(1)戦前の刑法改正作業 日本の現行刑法は,1907年(明治40年) 9 月 7 日に公布され,翌年の1908年(明治41年)10月 1 日から施行された。政府は,1921年(大正10年),臨時法制審議4 佐藤直樹『刑法39条はもういらない』(青弓社,2006年),医療観察法. NET http://www.kansatuhou.net/index.html(検索日2009年10月18日)等。