096号

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保安処分に関する一考察85会に刑法改正の綱領を諮問し,1926年(大正15年),同審議会は40項目にわたる「刑法改正綱領」を答申した。綱領は,「各罪ニ対スル刑ノ軽重ハ本邦ノ淳風美俗ヲ維持スルコトヲ目的トシ忠孝其....

保安処分に関する一考察85会に刑法改正の綱領を諮問し,1926年(大正15年),同審議会は40項目にわたる「刑法改正綱領」を答申した。綱領は,「各罪ニ対スル刑ノ軽重ハ本邦ノ淳風美俗ヲ維持スルコトヲ目的トシ忠孝其ノ他ノ道義ニ関スル犯罪ニ付テハ特ニ其ノ規定ニ注意スルコト」,「刑ノ量定ニ関スル一般標準ヲ定メ特ニ前項ノ趣旨ニ適合スル規定ヲ設クルコト」を,その柱とするものであった。この答申に基づいて,司法省内に「刑法改正原案起草委員会」が設置され,翌1927年(昭和2 年)6 月「刑法改正予備草案」が発表された。司法省は,さらに「刑法並監獄法改正調査委員会」を設置し,1940年(昭和15年)「刑法並監獄法改正調査委員会総会決議及留保事項(刑法総則及各則未定稿)」(いわゆる「改正刑法仮案」。以下,「仮案」)が公表された。刑法改正の諮問の趣旨が,淳風美俗の維持と刑事政策の促進という二つであったため,仮案は,国家主義・家族主義的態度と刑事政策の積極性という二つの性格をもつとされる5。総則153条,各則309条からなる仮案は,太平洋戦争の激化に伴い,議会への上程に至らなかったが,刑法の一部改正という形で,部分的に実定化された。また,1941年(昭和16年)に施行された改正治安維持法において,仮案の「予防処分」が,「予防拘禁」という名称で導入され,仮案の「保護観察」は,思想犯保護観察法として立法された。そして,戦後の刑法改正作業の出発点とされた6 のも,この仮案であった。(2)戦後の刑法改正作業 敗戦後,連合国軍最高司令官総司令部(GHQ)の指令により,治安維持法をはじめとする治安刑法の多くが廃止され,内務省警保局や特別高等警察も廃止された7。1947年(昭和22年)には,日本国憲法が施行され,同年,「応急措置」的な一部改正が行なわれた現行刑法についても,全面改正の必然性が認識されていた8。5 三井誠・町野朔・中森喜彦『刑法学のあゆみ』(有斐閣,1978年)94頁。6 法務省刑事局『改正刑法準備草案 附同理由書』(大蔵省印刷局,1961年)(小野清一郎執筆部分)85頁以下。7 内田博文『日本刑法学のあゆみと課題』(日本評論社,2008年)27頁以下。8 法務省刑事局『改正刑法準備草案 附同理由書』(大蔵省印刷局,1961年)(小野清一郎執筆部分)83頁等。