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1 論 説自然資源をめぐる秩序形成に関する序論的考察―― いわゆるコモンズ論を契機として ――松  本  充  郎  1.はじめに 人間が多様な生を追求するためには, 多様な生を物理的に支える資源が持続的....

1 論 説自然資源をめぐる秩序形成に関する序論的考察―― いわゆるコモンズ論を契機として ――松  本  充  郎  1.はじめに 人間が多様な生を追求するためには, 多様な生を物理的に支える資源が持続的に供給されることが必要である。そして,資源の持続的な利用を行うためには,社会の内部において治安が維持され,対外的にも平和と安全が確保されることが必要である。換言すると,社会秩序は,自由な生を追求するための前提である1。 さて,自然資源の利用・管理秩序につき,G. Hardin は”the Tragedy of theCommons”(Hardin 1968. 以下「コモンズの悲劇」)において,人口の増加局面で「コモンズ」は,資源の過剰な利用により必ず悲劇に陥る。それを避けるためには「コモンズ」の「私有化」又は「国有化」が必要であると主張した。 確かに,「無主地」は悲劇に陥ることが多く,「無主地」を「分割・私有化」や「全体を国有化」することによって悲劇を防いだケースも見受けられる2。しかし,私有化されない場合でも,無主地を入会地とすることによって悲劇を防いだケースもあった。日本の林野入会を例に取ると,人口の増加局面において限1 社会秩序は,最狭義には暴力がない状態(人身への物理的な攻撃からの安全)を意味する。本稿では,人身と財産の安全のほか,多様な生の追求を物理的に支える財物の持続性を保障するための秩序(以下自然資源の利用・管理秩序)を意味する用語として使う(後掲2-1)。2 「私有化」の成功例としては割山(御林や入会を分割し家に貸し出す),「国有化」の成功例としては江戸時代の御林やコスタ・リカの国立公園などがある(Totman 1989・松本 2003)。高知論叢(社会科学)第97号 2010年3 月