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116 高知論叢 第97号 1960年代以降,都市部への人口集中にともなう過疎・過密問題への対応として,過疎地域を対象にした過疎対策立法が制定され,過疎対策事業が行われてきた。過疎対策は人口減少にともなって生じ....

116 高知論叢 第97号 1960年代以降,都市部への人口集中にともなう過疎・過密問題への対応として,過疎地域を対象にした過疎対策立法が制定され,過疎対策事業が行われてきた。過疎対策は人口減少にともなって生じる地域社会の課題を解決することを目的としており,都市と農村の間に発生した地域間格差を解消することが期待されていた。しかし,過疎地域の人口減少は全体として止まっておらず,少子化ともあいまって,高齢者が多数を占める小規模集落の維持をどうするかということが依然として政策課題のままであり続けている。 一口に過疎地域といっても,過疎問題の表れ方は地域の事情に合わせて様々である。地域の事情は,地理的・気候的条件,社会資本の整備状況,文化・伝統などに規定される。人口動向に関していえば,そもそも過疎問題は都市と農村の間の生産性格差に規定されていることを考慮すれば,人口動向を地域の労働市場のあり方との関係において検討することが必要である。 そして,現在過疎地域の先行きに不透明感を増すことになっている一つの要因が,地方財政の維持可能性である。過疎地域の市町村は自主財源に乏しく,地方交付税などの依存財源に依拠する部分が大きいが,近年国の財政事情などを背景にして,地域間再分配機能の低下が懸念されている。過疎地域における自治体の存在は経済的・社会的にみて大きく,過疎対策の今後を考える上では,地方自治体のあり方と維持可能性についても検討する必要がある。 本稿では,過疎対策事業の全体的な動向を概観したうえで,高知県内の過疎関係市町村を取り上げて,過疎地域の現状と,高知県の過疎対策事業の特徴について検討する。そして,過疎対策が新しい方向性を見出して動き始めていることを紹介し,今後検討すべき論点を提示することとしたい。Ⅰ 過疎対策事業の経緯と評価1.過疎対策事業とは何か 過疎対策は,1960年代以降の日本経済の高度成長の過程において地方の人口が急激に大都市に流出したために生じた地域社会の諸問題に対処するため,1970年4 月に過疎地域対策緊急措置法が制定されることで始まった。同法は10