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126 高知論叢 第97号集落の機能低下の現状に注目する農村社会学や,過疎地域のなかでもとりわけ中山間地域の条件不利地域を問題にする農業経済学などの蓄積の多さに対して,必ずしも進んでいない。12 また, 国土計....

126 高知論叢 第97号集落の機能低下の現状に注目する農村社会学や,過疎地域のなかでもとりわけ中山間地域の条件不利地域を問題にする農業経済学などの蓄積の多さに対して,必ずしも進んでいない。12 また, 国土計画の観点からの研究についても, 近年進んでいるとは言いがたい。13 現在においても地域経済の不均等発展に基づく地域間格差の是正という課題は解消されたとは言いがたいが,むしろ現実の展開としては,全国総合開発計画が廃止されて国土形成計画へと衣替えをすることで,国土計画,均衡ある発展という理念が放棄され,過疎対策自体が後退していっているようにもみえる。 過疎対策をめぐる研究動向は,誤解を恐れずにいえば,未曾有の財政赤字という国の事情と経済のグローバル化を背景として地域間の不均等発展の是正という位置づけは弱くなりつつあるが,そのことによって取り残される過疎地域および集落のあり方や,地域の多様性と維持可能性に対する関心が高まっているという状況であろう。そこで,過疎対策全般をめぐる状況にとどまらず,過疎地域を多く抱える高知県を事例として,より具体的に過疎対策の内容を考えてみたい。Ⅱ 高知県の過疎関係市町村の動向1.高知県における過疎関係市町村の特徴 高知県において,過疎地域自立促進特別措置法で指定されている過疎地域数は,2010年1 月現在,27ある。14 高知県の過疎地域の人口動向を,表5 で確認し12 例えば,吉野(2009)では,農村社会学における集落研究の到達点と,近年の集落への注目の意味について論じられている。農業経済学からの研究事例としては,小田切・安藤・橋口(2006)が,「人・土地・ムラの空洞化」として,中山間地域の現状をとらえている。財政学・地方財政論から過疎地域・農山村の財政問題を研究しているものとしては,多田(1994),保母(1996),桒田(2006),関野(2007)などがある。また,過疎対策事業のうち,過疎債に着目している研究として,宮﨑(2005),小泉(2008)などがある。13 中嶋(1989), 32ページでは,1970年前後の過疎法が制定される時期には多くの成果が生み出されたものの,1980年代後半の時点で課題の探求が途絶えがちであることが指摘されている。しかし,地域経済学の分野から,地域再生や地域の内発的発展といった観点からの研究の蓄積は進んでいる。例えば,岡田(2005)などを参照。14 過疎地域に指定された27市町村のうち,第33条第1 項の規定によるみなし過疎市町村が1(香美市),第33条第2 項による旧市町村単位で一部指定されているのが5(高知市,四万十市,香南市,いの町,黒潮町)ある。なお,市町村の区分については,経年的