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4 高知論叢 第97号に対する優越性を論じたM. テイラーの説を紹介し(2-4),これらの議論の含意を小括する(2-5)。2-2 M. Taylorによる集合行為・公共財・コモンズの定義 まず, ある財が一度生産されるとある個....

4 高知論叢 第97号に対する優越性を論じたM. テイラーの説を紹介し(2-4),これらの議論の含意を小括する(2-5)。2-2 M. Taylorによる集合行為・公共財・コモンズの定義 まず, ある財が一度生産されるとある個人が消費しても他の個人が消費できる量を減らさないとき, 完全な分割不可能性(indivisibility)ないし同時性(jointness)を示すという。また, その集団のどのメンバーに対してもある財の消費を妨げるための費用が高くつくとき,排除不可能性(non-excludability)を示すという。 そして,個人間で完全に分割可能な財は,私的財(private goods)といわれる(5-6)8。また,ある財・サービス(以下「財」)が,ある程度分割不可能かつ排除不可能であるとき,公共財(集合財)と呼ばれる。ある個人が他人の供給した財を消費・利用する際に排除されなければ,(全員がただ乗りしようとする場合を除き)ただ乗りが可能になる。公共財には排除可能性がないため,ただ乗りが可能である(フリーライダー問題)。公共財問題の本質が排除可能性であるのに対して,コモンズ問題の本質は排除不可能性と分割可能性である(ある人が使うと別の人が使える量が減る。後掲3-1)。さらに,多くの公共財の相互作用は競合性(rivalness)の程度によって表現される。ある個人による財一単位の消費が別の個人の財一単位の便益(benefit)を減少させる場合,競合的であるという。競合性は, 実際には分割可能性を含意するが, 個人の効用であって当該財そのものの物的性質ではないという点は異なる(6-7。混雑や汚染は量を減らさないが効用を低下させる)。さらに,競合性は「規模の効果」の分析において重要な役割を果たす。組織が大きくなるにつれて,公共財供給のコストが増加するか(組織費用増加など),便益が減少するか(混雑による効用低下)あるいはその両方であるから,個人が公共財から得られる純便益は減少8 財は,分割不可能であっても排除可能であることがある。例えば,道路・橋・公園は,分割不可能であるが排除可能な形で供給されることもあり,この場合には通行料や入園料を課すことができる(有料道路や動物園など)。これに対して,公園の花の蜜は,分割可能で一匹の蜂が独占することもできるが,特定の蜂による消費を排除することは不可能であるから排除可能性はない。