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132 高知論叢 第97号産という観点からすると,決して楽観できるような状況ではない。 自然減型の香北町,社会減型の馬路村に共通してみることができるのは,地域労働市場において,第1 次産業から第2 次・第3 次産....

132 高知論叢 第97号産という観点からすると,決して楽観できるような状況ではない。 自然減型の香北町,社会減型の馬路村に共通してみることができるのは,地域労働市場において,第1 次産業から第2 次・第3 次産業への就業形態の転換が一定進んでいることである。その理由としては,中心部である高知市までの時間距離などの立地条件,地域振興の成果などが考えられるが,両地域とも就業者数・総人口数ともに減少は止まっておらず,過疎問題の一層の深刻化も懸念される。 ④漁村・市域型:過疎地域の中で比較的人口減少率が低い地域であり,海に面している漁村地域や,市域が多い。漁村地域の代表として佐賀町を,地域の商業機能を担っている存在の代表として田野町を取り上げて検討する。17 佐賀町の特徴は,漁業に従事する割合の高さである。農業人口の減少に比較して,漁業人口の割合は一定保たれている。また,農業が減少するのに並行して,1980年代以降製造業就業者が増えてくることと,1960年代から建設業就業者が多い。佐賀町の場合,他の類型の過疎地域とは違い,漁業が存在することで第1 次産業の解体が全面的に進まなかったことが,人口減少率の大幅な増加に繋がらなかった一つの要因になっている。しかし,第2 次産業就業者数が明確な減少傾向を示しており,漁業就業者数も減少傾向であることから,地域の雇用の維持のためには課題を抱えていることが推察される。 田野町は,就業者数からみれば,1960年時から製造業,商業の就業者が多く,他の地域でみられる第1 次産業の急速な縮小の影響を強くは受けていない。人口動向からみても1980年代までは自然増が続くなど比較的安定していた。その後,第1 次産業,第2 次産業ともに就業者数を低下させていくのに合わせて人口動向も社会減に加えて自然減に転化し,現在に至るまで人口減少が続いている。 高知県内の過疎地域を人口動向の特徴から大きく4 つの類型に分けて,地域内労働市場の面から考察してきたが,過疎地域にもそれぞれ地域の状況に規定されて課題が異なっている。そして,4 つの類型のなかでは①の奥地山村型に属する地域がとりわけ厳しい状況に置かれていることが分かる。奥地山村は農17 この類型で人口減少がもっとも進んでいないのは土佐山田町であり,本来であれば取り上げるべきであるが,2006年に合併して香美市になるまでは過疎地域に指定されていなかったので,ここではあつかっていない。