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高知県における過疎対策の現状と今後の課題133林統計の分類からは中山間地域として位置づけられる地域であるが,過疎対策によって中山間地域は解決できなかったことが,改めて確認される結果となっている。18 中山間....

高知県における過疎対策の現状と今後の課題133林統計の分類からは中山間地域として位置づけられる地域であるが,過疎対策によって中山間地域は解決できなかったことが,改めて確認される結果となっている。18 中山間地域でありかつ過疎地域であるという地域のおかれている状況が,「限界自治体」,「限界集落」問題という形で象徴的に表現されている。 それでは,高知県の過疎対策事業の実際はどのようなものであったかということを,第3 章で検討する。Ⅲ 高知県の過疎対策事業の特徴1.高知県の過疎対策事業 これまで高知県が行なってきた過疎対策事業の経緯をみたのが表9 である。表9 をみると,事業の大部分が交通通信体系の整備に偏っているのが分かる。交通通信体系の整備の内容の中心は道路整備であり,高知県の森林率の高さ,起伏に飛んだ地形という交通条件の悪さを反映している。県主体分と市町村分それぞれでみても,交通通信体系の整備は重要性が高い。交通通信体系整備に関する事業費の多さは,全国の状況と比較してみたときに,高知県の特徴としてみることができる。 そして,県主体分,市町村分ともに,近年事業規模を増加させているのが産業振興である。内訳としては,県主体分の場合は農林水産業の振興,地場産業の振興,企業誘致が主であり,市町村は基盤整備が多い。過疎対策事業を通じて,第1 次産業を中心に産業振興に取り組む姿が推測される。 次に, 過疎債の発行目的別内訳を確認する。表10は高知県内の過疎市町村が各期間別に発行した過疎債の金額を示したものである。資料の制約上,1990年代の活性化法の時期のものがないが,1970年代以降全体として交通通信施設,すなわち道路整備を事業対象にして発行したものが多い。また,2000年代に入ると産業振興施設と厚生施設を対象にした発行額が増加している。産業振興施18 保母(1996),81-97ページ参照。保母氏は, 島根県と鳥取県の県境地域における過疎対策事業の検証を通じて,これまでの過疎対策によっては中山間地域の問題は解決できなかったことを指摘している。