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高知県における過疎対策の現状と今後の課題137くの施策が行なわれるようにもなっている。しかし,過疎地域の人口減少は止まっておらず,高齢化が追い討ちをかけることで,集落の維持にとどまらず市町村の行政自体の....

高知県における過疎対策の現状と今後の課題137くの施策が行なわれるようにもなっている。しかし,過疎地域の人口減少は止まっておらず,高齢化が追い討ちをかけることで,集落の維持にとどまらず市町村の行政自体の維持についても厳しい状況をもたらしている。そして,過疎市町村を支えるために都道府県の役割が期待されるという構図は,地域社会・地域経済の衰退が,都道府県,ひいては国全体に影響を及ぼしていくということを示している。このような認識は,全国の過疎地域にも共通する部分が大きい。 高知県の過疎対策事業の特徴は,全国的な傾向以上に道路整備に傾斜していることであり,条件不利地域対策としての限界性はもともと強かった。高知県では,森林率が日本で一番高く,農業経営の大規模化や企業誘致の条件もあまりない状況において,条件不利地域の産業振興が必要とされるところであったが,日本の国土計画における条件不利地域を対象とした「地域政策」は,農業振興を大規模化した高生産性農業の育成を通じてもたらされるという政策構造であった。22 条件不利地域はもともと地理的制約から農業の大規模化には不向きであり,高知県のように都市部から距離があり,中山間地域を多く抱えるところでは,生産面での不利な条件から脱することができない。また,過疎対策は市町村の財政的支援が中心になるため,農家など生産の担い手に直接支援する仕組みになっていない。23 中山間地域の農業を維持するのであれば, 各農家の自己努力だけでは解消が難しく,所得の格差是正を国家財政のレベルで社会的に補償する必要があり,中山間地域直接支払制度や,戸別所得保障制度などの議論の進展が期待されるところである。 高知県の過疎対策事業は,近年産業振興に振り向けられる額が増加しており,全国の動向とも共通している。しかし,資料の制約上,1990年代以降高知県内においても観光・レクリエーションを重視した取り組みが増加したのか,というところまでは分からない。全国的な動向でも2000年代に入ってから観光・レクリエーション向けの事業額は減少していきているため,一概にはいえないが,少なくとも高知県の過疎対策事業でみれば2000年代の産業振興の内訳は主に第22 保母(1996),93ページ。ここでの国土計画とは,第四次全国総合開発計画を事例にして述べられている。23 保母(1996),96-97ページ。