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自然資源をめぐる秩序形成に関する序論的考察5する(11-12)。したがって,集合行為の問題全体にとっては,排除可能性の次に競合性が重要である(7)。 社会秩序や国防(national defense)は,一括りに公共財であ....

自然資源をめぐる秩序形成に関する序論的考察5する(11-12)。したがって,集合行為の問題全体にとっては,排除可能性の次に競合性が重要である(7)。 社会秩序や国防(national defense)は,一括りに公共財であるとされるが,防衛(defense)は抑止(deterrence)と防護(protection)に分類できる。警察・裁判所・抑止は純粋に分割不可能かつ排除不可能な公共財である(8)。これに対して,他の人からの個別的な攻撃に対する防護は,不完全に分割不可能かつその形態により排除可能である。ボディ・ガードや鍵は純粋な私的財であり,抑止や防護を供給するためには私的財が必要である。 以上がM. Taylor の用語法である。では,集合行為の問題を解決するため,どのような状況下で人々は協力するのだろうか。この点について,Hobbesに代表されるリベラルな国家論は国家が必要であるとし,後に検討するM.Taylor は共同体が望ましいとする。以下, それぞれの議論を紹介し, これらの議論について検討する。2-3 国家的秩序の正当化―『リヴァイアサン』と「コモンズの悲劇」9―(1) Hobbes『リヴァイアサン』(1651) ホッブズの理論は,国家のリベラルな正当化理論の代表である。彼によると,人間は感覚的な動物であり快楽を求め苦痛を避ける。快楽は継続的な成功によってもたらされ,快楽と苦痛は他人との比較衡量によって強く影響され,競争心が行動の原動力となる(Lev. 第6 章)。人間の能力は概ね平等であり,そのことから自己保存等の目的を達成することについて希望の平等が生じる。同一の物事を意欲し二人ともそれを享受することはできない場合には希望の平等から敵対が生じ,共通の権力がなければ敵対から戦争が生じる。自然状態において,各人は相互の身体に対してさえ権利を持つから生命は保障されない。このように,自然状態とは各人の各人に対する戦争である。人々は,死への恐怖・快適な生活への意欲・それらを勤労によって獲得する希望という情念から,平和を志向する。理性は平和のための諸条項を示唆し,人々は諸条項について合9 本節は,Hobbes(1651)・Taylor(1987)第6 章のほか,佐々木(2007)を参照して構成した。