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高知県における過疎対策の現状と今後の課題141づくりを始めている。31 産業振興における産業と福祉の統合という方向性は,単なる所得機会の向上を目指すだけではなく,過疎地域の維持そのものを対象とした対策へと....

高知県における過疎対策の現状と今後の課題141づくりを始めている。31 産業振興における産業と福祉の統合という方向性は,単なる所得機会の向上を目指すだけではなく,過疎地域の維持そのものを対象とした対策へと過疎対策の重点が移行してきていることを示しているものであろう。条件不利地域での産業振興はもとより容易なことではないが,現在の生活を守り,過疎法にうたわれるように地域の個性を活かすためにも,地域の特長を住民自らが把握した上で,地域と住民の事情に合った施策が求められている。3.財政問題と財政手法 過疎関係市町村は,近年の「三位一体改革」を受けた地方交付税の激減により, 厳しい行政改革を迫られてきた。32 とりわけ中山間地域の場合, 行政サービスは地理的にどうしても非効率にならざるを得ない面があり,自主財源確保が難しい地域ほど,行政コストが高くなるという背反的状況が生じることになる。また,過疎地域では地域経済と地域社会の主体として市町村の役割が大きいため,地方財政の規模が縮小することは,人的・経済的に地域社会の再生産にとって否定的な影響をもたらすことになる。 地方財政の維持可能性という点からすれば,与野党で合意されたと報じられている2010年以降の過疎法の延長と,過疎債の対象事業の拡大は肯定的に評価しうるものであろう。地方交付税措置のある過疎債は,自主財源の少ない過疎関係市町村からすれば有利な財源調達手法として依然として大きな意味を持つためである。しかし,過疎債の拡大は,地方交付税の本来の性格である一般財源という意味を狭めるという面については改めて検討が必要である。 そして,過疎地域の地方行財政についてつきつめて考えれば,地方自治体はどうあるべきか,という問題に行き着く。1990年代以降,日本では地方分権改革が進んできたが,行政事務の基礎自治体主義をとり,財政的再分配機能を弱めていけば,財政力の格差に応じて各市町村の行政能力に差がでてしまう。財政的な見通しが立たないことから市町村合併に踏み切った市町村も多く,合併31 高知県産業振興推進部地域づくり支援課のホームページより。32 「三位一体改革」の内容と実際については,平岡・森(2005)を参照。