097号

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142 高知論叢 第97号により周辺化してしまった地域の行政サービスの低下が懸念されている。33 2010年に入ってから,民主党政権が掲げる「地域主権」確立のため,総務省は「地方行財政検討会議」の初会合を開催し,地方....

142 高知論叢 第97号により周辺化してしまった地域の行政サービスの低下が懸念されている。33 2010年に入ってから,民主党政権が掲げる「地域主権」確立のため,総務省は「地方行財政検討会議」の初会合を開催し,地方自治法改正作業に着手した。地方議会の改革が一つの焦点になりそうな状況であるが,地方自治体の組織や運営について自由度を拡大し,全国的に統一して定める事項について見直しをすべきではないか,ということも検討の視点に入れられた。34 地方自治体の自由度を拡大するということは,憲法上の要請と矛盾する可能性もあり現実的には簡単には進まないことが予想されるが,仮に自由度を拡大した場合,地方交付税制度の見直しに繋がり,財政力の差がそのまま行政サービスの差として跳ね返ってくる可能性がある。過疎地域の維持可能性を考えるのであれば,地方分権を進めるといっても,国や都道府県による市町村の補完的役割は必ず必要になろう。今後,地域の多様性を反映しながら地方行財政制度を支えていくための広域連携のあり方が具体的に問われる必要がある。おわりに 本稿では高知県の過疎地域の現状について,地域の労働市場との関係から大まかなスケッチを試みたが,改めて第1 次産業の衰退が雇用の減少と人口動向に影響を与えること,過疎地域でありかつ中山間地域であるような奥地山村がより厳しい状況に置かれていることが確認された。過疎地域の人口減少が止まっていないことから,過疎対策の目的は必ずしも達成されたとはいえないが,過疎対策事業において,産業振興と雇用の創出をどのように図っていくのか,ということは今後も重要な課題であり続ける。 また,過疎対策事業は市町村単位での実態に分け入って検討する必要があるが,本稿では扱えなかったため,今後の課題としたい。さらに,集落単位での33 田中他(2010)の調査では,過疎地域の小規模集落において,市町村合併に対しての受けとめとして,行政サービスの面で低下した,今後が不安である,など批判的な意見が多くみられた。34 『高知新聞』2010年1 月21日付。