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高知県における過疎対策の現状と今後の課題143実態については,いうまでもなく重要な課題である。総務省の過疎問題懇談会は,集落の価値に対する再評価を提起しており,居住の場であることはもとより,生産活動や交....

高知県における過疎対策の現状と今後の課題143実態については,いうまでもなく重要な課題である。総務省の過疎問題懇談会は,集落の価値に対する再評価を提起しており,居住の場であることはもとより,生産活動や交流の場,地域の伝統文化,農地の管理や森林の保全を通して自然環境を守り,水源の涵養を行なうこと,下流域における土砂災害の防止等など,集落が大きな公益的役割を果たしてきたことを指摘している。自然環境を守る上で,山・川・海の連携の必要性が認められるようになってきているが,改めて集落を守ることの価値を公共的な観点から位置づけることが求められている。過疎地域は,近年日本全体が人口減少に転じたこともあって,生活条件の整備が遅れた地域ではなくむしろ人口減少社会の維持可能性の先行事例としてみられるようになってきてもいるから,集落を守ることの意味づけは,日本全体の課題としても考える必要があるだろう。 そして,現状では,集落を始め,過疎地域での地域社会の守り手としての地方自治体の意味付けが,国の財政再建推進や,再分配機能の低下を背景に十分にはなされていない。市町村合併が進んでいることの背景に地方交付税の減少など財政問題が大きな要因を占めているが,過疎地域では自主財源の増加を図るには当然のことながら限界がある。地域の実情をくみ取って,地域社会を維持していけるような地方財政制度への改革はどのようなもので,どうしたら実現できるのかということを,今後の課題として取り組んでいきたい。 なお本稿は,文部科学省科学研究費補助金(基盤研究(C),課題番号:20530526,研究課題名「限界集落における高齢者の孤立問題と行政・地域社会の支援機能に関する実証分析」,代表:田中きよむ高知女子大学教授)による成果の一部である。参考文献井本正人(1989)「過疎地域の再生と地方財政」『高知女子大学紀要 自然科学編』第37巻,1989年3 月大野晃(2005)『山村環境社会学序説』農文協岡田知弘(2005)『地域づくりの経済学入門』自治体研究社小田切徳美・安藤光義・橋口卓也(2006)『中山間地域の共生農業システム』農林統計協会小田切徳美(2009)「農山村における新たな経済-危機の下での新展開-」『JA 総研レ