097号

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6 高知論叢 第97号意へと導かれる。これらの諸条項は自然の諸法と呼ばれる(Lev. 第13章)。 ここで,自然権とは,生命を維持するために判断力と理性を行使して最適の手段と考えることを行う自由である。また,自....

6 高知論叢 第97号意へと導かれる。これらの諸条項は自然の諸法と呼ばれる(Lev. 第13章)。 ここで,自然権とは,生命を維持するために判断力と理性を行使して最適の手段と考えることを行う自由である。また,自然の諸法は,理性によって発見された戒律すなわち一般法則であり,次のことを命ずる。人々は平和を獲得する希望がある限りそれに向かって努力すべきであり,それができないときに限り戦争しても良い(第1 の自然法)。人は平和と自己防衛のために彼が必要だと思う限り,他の人々もまたそうである場合には,全てのものに対するこの権利を進んで捨てるべきであり,他の人々に対しては,彼らが彼自身に対して持つことを彼が許すのと同じ大きさの自由を持つことで満足すべきである。自分の生命と生存手段を防衛するという権利は契約や信約によって譲渡することができない(第2 の自然法。Lev. 第14章)10。第3 の自然法は,人々は結ばれた信約を実行すべきだとする。しかし,自然状態において結ばれたお互いの約束だけでは,最初に信約を履行する者には相手もこれを履行するという保証がなく,自分の生命と生存手段を防衛するという不可譲の権利に反するから,大きな壁にぶつかる(Lev. 第15章)。 人々は,自らを外国人の侵入や相互の侵害から防衛し,それによって彼らの安全を保障して,彼らが自己の勤労と土地の産物によって自己を養い,満足して生活できるようにすることを目的として共通の権力を樹立する必要に迫られる。共通の権力を樹立するために社会契約を締結する動機は,損得勘定ではなく恐怖から逃れるためである。全員が,その全ての力と強さを一人又は合議体に与え,一人又は合議体を代理人として,代理人の判断に従うことを相互に約束しあう(Lev. 第17章)。(2) G. Hardin「コモンズの悲劇」 G. Hardin は,次のように議論する。すなわち,部族間の戦乱が続き,疫病が流行し,密猟が行われている間は,人間の数も家畜の数も増加しないから,10 契約(contract)が権利の相互的な譲渡を意味するのに対して,信約(pact, covenant)は契約者の一方が,彼の側では契約されたものを引き渡して,相手をある決定された時間ののちに彼のなすべきことをなすまで放任し,その期間は信頼しておくことをいう。