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自然資源をめぐる秩序形成に関する序論的考察7牧草地の管理は必要ない。しかし,めでたく戦乱・疫病等から解放されると,マルサスが指摘するような人口増加圧が高まり,「コモンズの悲劇」が始まる。 ここで, コモ....

自然資源をめぐる秩序形成に関する序論的考察7牧草地の管理は必要ない。しかし,めでたく戦乱・疫病等から解放されると,マルサスが指摘するような人口増加圧が高まり,「コモンズの悲劇」が始まる。 ここで, コモンズ―誰もがfree に(自由に/ ただで)出入りできる牧草地という意味であって英国のコモンズと同じではない―を想像してみよう。このような牧草地において,牧夫は自分自身の効用を最大化したいと考える。放牧頭数を1頭増加させることによる効用の増加分(個人が独占できる)が,過放牧による牧草の減少による効用の減少分(複数の人に分散される)よりも大きくなる限り,少しでも多くの牛を放し飼いにしようとする。牛の数は牧草地全体から見た最適な頭数を超え,牧草地の草は食みつくされる。(3) 共通点 これらの議論の共通点は,次の点にある。すなわち,自然状態において囚人のディレンマが不可避であることから,無秩序に陥る。囚人のディレンマを避けるためには国家によって秩序を形成するしかない。このように主張し,国家による秩序形成を正当化する。しかし,囚人のディレンマは,国家によらなければ回避できないのだろうか。2-4 M. TaylorのHobbes 批判   ―国家の秩序形成機能の共同体による代替可能性― 『協力の可能性』は,次のように問いかける。各プレーヤーは合理的なエゴイストであり,コミュニケーションが可能ではあるが,取り結んだ合意を守るよう拘束されていないという状況に置かれている。このような状況下で,協力の可能性(結果(C,C)をもたらすような可能性)はあるのだろうか(17)。『協力の可能性』は次のような議論を展開する11。(1) 静的な分析(第2章) 通常,集合行為における個人の選好は,囚人のディレンマゲームであるとさ11 囚人のディレンマゲーム・チキンゲーム・保証ゲームについては後掲2-4の議論及び別表「M. Taylor 1987による証明」を参照。