097号

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8 高知論叢 第97号れる。Hobbesは,国内の平和と安全および国家の防衛の問題について,国家不在の状況で人々が直面するのは,囚人のディレンマゲーム(prisoner’s dilemmagame)であり, 協力の可能性はないと考え....

8 高知論叢 第97号れる。Hobbesは,国内の平和と安全および国家の防衛の問題について,国家不在の状況で人々が直面するのは,囚人のディレンマゲーム(prisoner’s dilemmagame)であり, 協力の可能性はないと考えていた。Hardin も, コモンズを共同で利用する人々は囚人のディレンマゲームに直面し「コモンズの悲劇」に陥ると考えていた(表①)。しかし,『協力の可能性』第2 章では,(一回限りのゲームだと想定しても)集合行為問題は,囚人のディレンマゲームとは限らず,保証ゲーム(assurance game)かチキンゲーム(chicken game)又はこれらの混合ゲームになることもあり,いずれの場合も公共財は供給されるとする(39,表②③12)。 さらに,N 人に拡張した場合はどうか。保証ゲームの場合には,二つの均衡のうち全員の協力が全員の裏切りよりも望ましいから,全員の協力が均衡解である(40,表④)。チキンゲームの場合には,当事者がマクシミン戦略を採用すれば協力が選択される。また,ミニマックスリグレット戦略を採用すれば協力になるか裏切りになるかは利得の差によって決まるが,いずれの戦略が採用されるかは分からない(45-49,表⑤)。(2) 動的な分析(第3章・第4章) 静的な分析において,最悪の場合には囚人のディレンマゲームになる。その場合でも,時間の概念を導入し動的な分析を行うと,次に見るように一定の状況下では自発的協力が合理的でありうる(第3 章は2×2・第4 章はN 人の場合の証明である)。 すなわち,一回限りの囚人のディレンマゲームにおいて,(定義上)当事者は相手の選択を考慮せずに自分の戦略を選択するが, スーパーゲーム(繰り返しゲーム)では当事者は相手の選択を考慮して自分の戦略を選択する(60-61)。当事者には, 無条件裏切り・無条件協力・条件付協力の3 つの戦略がありうる。無条件裏切りは常に均衡であるが,無条件協力は安定的ではなく,無条件12 長谷部2004は,二カ国間の戦争状態を「2×2 チキンゲーム」とし,(D, C)(C, D)のCは外的からの侵略があった場合に進んで降伏するという選択(社会契約の解消)であるとする。