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12 高知論叢 第97号(3) ホッブズ批判(第6 章16) さて,ホッブズの議論をゲーム論的に再構成するとどうなるか。ホッブズは,自然状態を囚人のディレンマゲームであると仮定し,静的な分析を行っている。自然状....

12 高知論叢 第97号(3) ホッブズ批判(第6 章16) さて,ホッブズの議論をゲーム論的に再構成するとどうなるか。ホッブズは,自然状態を囚人のディレンマゲームであると仮定し,静的な分析を行っている。自然状態において, 人間は協力(C)・非協力(D)の二つの戦略から現実の行動を選択する。ここで,戦略C は自然権の放棄に同意することであると言い換えてよい。ホッブズは(C, C)を平和と呼び,(C, D)(D, C)(D, D)を戦争状態と呼ぶ。戦争は平和よりもパレート劣位であるが,D を選択する場合には戦争に陥る。そこで,D を選択しないように共通の権力(Commonwealth)を創出する。しかし,既に①②で見たように,集合行為の問題は一回限りの囚人のディレンマゲームとは限らず,協力の可能性は否定されていない。 ここまでは,個人の選好を出発点として,議論を展開してきた。しかし,国家が個人の選好に影響を与えるなら,話はより複雑になる。国際社会において,国家同士は自然状態に置かれているが,条件付協力によって秩序を形成している。国家は,共同体を崩壊させ,個人の自発的協力を損なう。(4) 含意―部分的代替案のとしての共同体(第7章)― 重要な公共財は,共同体(=自発的協力)によって供給されうる。共同体は,相互主義的な実践(reciprocity practice)と村八分をはじめとする制裁によってコモンズの悲劇を防ぐことができる。公共財問題には,国家による集権的な解決策もあるが,共同体による分権的な解決策もある。3.『協力の可能性』の検討 次に検討するように,一方で,M. Taylor の議論には,非常に問題点が多い(3-1)。他方で,国内の秩序形成問題(3-2)にも,国際的な次元の秩序形成問題(3-3)にも示唆を与えるものである。16 『協力の可能性』は,ホッブズとヒュームをたたき台として議論を展開しているが,ヒュームに関する議論については現在の筆者の能力を超えるので触れない。