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自然資源をめぐる秩序形成に関する序論的考察133-1 問題点 M. Taylorの議論には次のような問題点がある。第1 に,自然資源問題にとって,利用と管理の区別は非常に重要である。自然資源を持続的に利用し続けるため....

自然資源をめぐる秩序形成に関する序論的考察133-1 問題点 M. Taylorの議論には次のような問題点がある。第1 に,自然資源問題にとって,利用と管理の区別は非常に重要である。自然資源を持続的に利用し続けるために必要なことは,単に既に存在する資源の過剰な利用を調整するだけではない。資源を持続的に供給するための組織や人為的ストックを形成し, 維持管理のために労働することが必要である(この点は本稿冒頭でも述べた)。G. Hardinの「コモンズの悲劇」は利用と管理の区別,さらには,管理の内容と重要性を捉えきれていないが,M. Taylor の議論にも同様の欠点がある。これに対して,Ostrom は,共通貯蔵資源(common pool resources, CPRs)の資源系[resourcesystem] と資源単位[resource units] を区別し, 資源系の供給(provision ofCPRs)とCPRs からの資源の占用(appropriation from CPRs)を対応させているから,人為的ストックの形成を明確に意識している(Ostrom1990, 30)。 第2 に,コモンズ問題の定義は,議論の目的に合わせて再検討することが必要である。新古典派経済学は,財やサービスを消費の排除可能性と競合性の程度から4 通りに分類する(Mankiw 2006, 224. ここで,競合性[rivalry] とはM. Taylorのいう分割可能性をさす)。そして,排除可能性が低く競合性が低いものは公共財に,排除可能性が低く競合性が高いものは共通資源(common resources)に,排除可能性が高く競合性が低いものは地域独占に,排除可能性が高く競合性が高いものは私的財に分類される17。この定義の目的は,市場が私的財の分配について効率的だがそれ以外について限界があると主張することにはあっても,共同体の形成の説明にはない。CPRs 問題を考えるにあたり,Ostrom は,資源系には排除性がありフリーライダー問題が起きるから公共財,資源単位には控除性(subtractability, M. Taylor のいう分割可能性)があり過剰利用が問題となるから私的財に類似した扱いをすべきであるとする(Ostrom 1990, 32-33)。共同体の形成という本稿の関心からは,排除可能性・競合性は,CPRs の成立後に問題となる属性の例示と位置づければ十分である18。M. Taylorの議論17 M. Taylor は,分割可能性が競合性と事実上ほぼ一致することは認めている。18 例えば,一度形成された入会の過少利用が問題となる場合,過剰利用の抑制のための「排除」は問題とならないが,管理労働のフリーライドを防ぐことは必要である(飯國2010)。