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14 高知論叢 第97号の中では,集合行為問題の解決可能性がゲーム論的に条件付協力(しっぺ返し)戦略の採用条件として明確化されたことと,コモンズ問題には公共財問題に還元しきれない部分があるという指摘を評価....

14 高知論叢 第97号の中では,集合行為問題の解決可能性がゲーム論的に条件付協力(しっぺ返し)戦略の採用条件として明確化されたことと,コモンズ問題には公共財問題に還元しきれない部分があるという指摘を評価すべきである。 第3 に,「非協力ゲーム」から証明されたのは,本当に「共同体」の形成なのだろうか。M. Taylor の他の著書によると,共同体(community)とは,次のような集団を指す。(ⅰ)信念や価値観を共有し,(ⅱ)当事者の関係が直接的かつ多面的である(ⅲ)二者間の相互性とともに一般化された相互性を実践している(23, Taylor 1982)。非協力ゲームから証明できるのは,当事者の利害関係が安定的に一致した状態ではあっても共同体ではない。(ⅰ)信念や価値観の共有や(ⅱ)当事者の関係の直接性・多面性は,証明されていないと言わざるを得ない。 第4 に,上記の点を措くとしても,一度限りの2×2・N 人保証ゲームにおいて,当事者が二つの均衡(C, C)と(D, D)のうち(C, C)を選ぶというのは希望的観測でしかない(表②④)。また, 一回限りのゲームにおいて囚人のディレンマゲームよりN人チキンゲームのほうがましであるという指摘も希望的観測である(表⑤)。 第5 に,M. Taylor も自覚しているが,(少なくとも1987年段階では)チキンゲームについては2×2 繰り返しゲームとN 人繰り返しゲームへの一般化には成功してないし,情報不完全なゲームについても検討していない。さらに,具体的ゲームの現実への当てはめに疑問がある(水防・利水・草原管理等の問題群は,囚人のディレンマゲームではなく,本稿では検討していない組織形成ゲームではないか。Okada and Sakakibara 1991)。 最後に,共同体自身が抱える問題にあまりにも無頓着である。国家法による統制なしに,社会が密な監視と制裁を行うことの恐ろしさを真剣に捉えるべきである。国家の過度な介入が個人の自発的協力の可能性を損なう可能性を自覚しつつ,「地域にできることは地域に,地域にできないことだけを国家に」(国と地方の関係では「補完性原理」)という考え方を取れば足りるのではないか。3-2 国内外の秩序形成問題への示唆 国内の秩序形成問題については,無主物と共同体的なアクセスの制限がある