097号

097号 page 25/212

電子ブックを開く

このページは 097号 の電子ブックに掲載されている25ページの概要です。
秒後に電子ブックの対象ページへ移動します。
「電子ブックを開く」をクリックすると今すぐ対象ページへ移動します。

概要:
自然資源をめぐる秩序形成に関する序論的考察15入会との区別を前提として,Taylor は,2 人×2・一回限りのゲームをN 人・繰り返しゲームに拡張し,共同体によって公共財を供給できる可能性があることが証明されてい....

自然資源をめぐる秩序形成に関する序論的考察15入会との区別を前提として,Taylor は,2 人×2・一回限りのゲームをN 人・繰り返しゲームに拡張し,共同体によって公共財を供給できる可能性があることが証明されている。これに対して,N 人・繰り返しゲームに拡張しても囚人のディレンマゲームになる場合(やあまり解明されていないチキンゲームになる場合)については,国家の必要性は全否定されていない。 また,『協力の可能性』の論証は,地方の資源問題の現実に非常に見通しの良い説明を与えてくれる。例えば,高齢者に跡継ぎがいない場合には,資源を枯渇させる場合が多い。その理由は,跡継ぎがいない高齢者にとって割引率が非常に高く,裏切りの利得が損失を上回りやすいからであるといえよう。 さらに,国際的な秩序については,世界政府が無くとも条件付協力によって国家同士の監視や相互主義的な制裁が機能すれば形成されうる。相互主義的な制裁が機能するためには,国家の数が多すぎず関係が密であることが必要になる。とはいえ,特権的国家の横暴に歯止めをかけにくいという限界には留意が必要である。4.結びに代えて 本稿では,自然資源問題には過剰利用に加えて過少利用問題があることを念頭に置いて,入会的秩序の形成と再編に関する考察を試みた。その手掛かりとして,第2 章では,M. Taylor の『協力の可能性』を取り上げ,非協力ゲームにおいて限定的合理的な個人の行動が,一定の条件下では条件付き協力戦略が採用され協力に至る可能性があることを指摘した。 続いて第3 章では, まず, 比較対象としてOstrom・Mankiw・飯國芳明の議論を取り上げ,自然資源問題において実は人為的ストックの形成が重要であることを指摘した。さらに,コモンズ問題は,ストックやルールの形成・維持管理について集合行為問題としての性格を持つからこそゲーム論的な接近が意味を持つことを指摘した。 ともすれば,排除可能性・競合性という属性に関する議論,さらには財やサービスの分類に目を奪われがちである。しかし,これらの議論は物神化されるべ