097号

097号 page 26/212

電子ブックを開く

このページは 097号 の電子ブックに掲載されている26ページの概要です。
秒後に電子ブックの対象ページへ移動します。
「電子ブックを開く」をクリックすると今すぐ対象ページへ移動します。

概要:
16 高知論叢 第97号きではなく,利用・管理の対象となる資源の多様性を見据えて吟味されるべきである。 最後に,法学にとって,コモンズ論の意義はどこにあるのだろうか。第1 に,本稿で論じた理論上の「国家」や....

16 高知論叢 第97号きではなく,利用・管理の対象となる資源の多様性を見据えて吟味されるべきである。 最後に,法学にとって,コモンズ論の意義はどこにあるのだろうか。第1 に,本稿で論じた理論上の「国家」や「共同体」に歴史上の何が当てはまるかは大問題であり,自然資源の問題だけが歴史上の「国家」や「共同体」の形成の契機となったわけでもない。しかし,歴史上,「共同体」が衝突しあい強力な「共同体」がやがて「国家」に生まれ変わったと考えれば,理論上,「共同体」の形成を論ずることは「国家」の形成を論ずる前提といえる。 第2 に,1980年代の繰り返しゲームによる証明の後,ワンショットゲームによる証明も行われている(Okada and Sakakibara 1991)。ここから学ぶべきは,囚人のディレンマが論理必然的な帰結ではなく,入会の形成が論理的に不可能ではないことである。ここから先の数学的に厳密な論証は経済学に任せ,法学はコモンズ論の比喩的な含意を所有論・公共信託理論等との比較から明らかにし,実務的な課題から既存の入会理論を再構成すべきである(その嚆矢として鈴木・富野2006)。これらの問題ついては今後の課題としたい。<参考文献>飯國芳明(2009)「コモンズとしての二次草地管理」景観生態学14(1),pp. 33-39。飯國芳明(2010)「コモンズ形成の原理と現代的課題」高知論叢97号。井上達夫(1990)『他者への自由』創文社。戒能通孝(1964)『小繋事件』岩波書店。佐々木毅(2007)『政治学の名著30』筑摩書房。鈴木龍也・富野暉一郎(2006)『コモンズ論再考』晃洋書房。玉城哲(1983)『水社会の構造』論創社。沼田真・岩瀬徹(2002)『図説 日本の植生』講談社。長谷部恭男(2004)『憲法と平和を問いなおす』筑摩書房。松本充郎(2003)「国連気候変動枠組条約の国内法的展開(2)完―森林等吸収源とコスタ・リカの森林関連法制を事例として―」上智法学論集第46巻3 号,pp. 97-138。松本充郎(2006)「自然環境問題における公共性」,井上達夫編『公共性の法哲学』ナカニシヤ出版,pp. 309-329。渡辺洋三・北条浩編(1975)『林野入会と村落構造―北富士山麓の事例研究』東京大学出版会。