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19 論 説コモンズ形成の原理と現代的課題飯  國  芳  明  1.はじめに E. Ostrom はコモンズ論で著名な経済学者であり,その業績によりノーベル経済学賞を2009年に受賞した。Ostrom によれば,コモンズ....

19 論 説コモンズ形成の原理と現代的課題飯  國  芳  明  1.はじめに E. Ostrom はコモンズ論で著名な経済学者であり,その業績によりノーベル経済学賞を2009年に受賞した。Ostrom によれば,コモンズは「共同利用の資源」common-pool resource,すなわち,「潜在的な利用者(potential beneficiaries)をその利用から排除するためには多大の費用を要する自然あるは人工の資源系(resource system)」とされる1。また,主流派の経済学においてもコモンズはcommon-pool resource(共有資源)として扱われるが,その財の特徴は排除不可能性と競合性に置かれる。ここで排除可能性とは「人々がその財を使用できないようにすることができるか」どうかを問題しており,競合性では「ある人がその財を使用することによって,他の人がその財を利用できる量は減少するか」どうかに着目する。共有資源は,使用が競合し,かつ,使用の排除がむずかしい財・サービスとして位置づけられている2。排除が容易にできない資源であるという捉え方は,たとえば沖合の海洋資源を考えるときに有効である。広大な海洋で一定の漁業者の排除は多大な費用が必要となる。費用便益の観点からみて,排除は成り立ち難い。また,沿岸においても個人が特定の利用を排除することは容易でない。コモンズ論の嚆矢となったG. Hardin が「共有地の悲劇」で想定する放牧地でも同様の捉え方がな1 Ostrom[14]pp. 30-31.2 マンキュー[10]p. 303.高知論叢(社会科学)第97号 2010年3 月