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26 高知論叢 第97号3. 資源の改良可能性からみたコモンズの分類前節の分析でみたように,コモンズ形成の契機を検討するに際して,労働投入の量と資源の生産性の関係をみることは重要である。コモンズの形成期に想定....

26 高知論叢 第97号3. 資源の改良可能性からみたコモンズの分類前節の分析でみたように,コモンズ形成の契機を検討するに際して,労働投入の量と資源の生産性の関係をみることは重要である。コモンズの形成期に想定する社会・経済状況は前近代ないしは近代初期であり,当時の労働の基本単位は家族労働力であるとしてよい。この単位で労働投入をして,土地(ないし空間)の構造を改良し,その生産性が大幅に増大する場合には,おそらく家族労働の投入は実行される。そして,投入先の財は家族の所有物(私有財産)になる。水田の開発や畑の改良,近隣の河川からの水路の設置などがそれに当たる。他方,生産性がさほど増加しないとき,改良行為が行われるかどうかは,その家族が置かれている状況による。困窮の度合いが一定を越えている場合には,敢えて痩せた土地の開墾も辞さない可能性はある。労働投入を行うかどうかは,それぞれの社会の状況によって規定されるものであり,あくまで相対的なものである。しかし,一般論としては,一定水準を下回る生産性の財についてそれを改良するための労働投入がなされないとの想定は可能であろう。さきの三瓶地域の場合,源流はいずれも草地より低いところに立地しており,水資源は乏しい。また,この一帯は火山灰土の多い土壌であり,リン酸が吸着して植物が生長しにくい状況にあった。加えて,強風のため,草木が育ちにくい環境にもある。このため,耕作地としても林地としても不適である。労働を投入して,土壌を改良するより野草をそのまま利用する方が経済的であった。家族単位の労働投入で生産性の向上が望めないときでも,大規模な労働力を同時に投入すれば大幅に生産性を向上できる場合がある。草地の管理や石干見,水利施設などが好例である。草地の場合,草地を維持するためには春先の火入れ,そして,牧柵の設置及びその維持管理が必要となる。火入れを行うには防火帯づくり(輪地切り)が欠かせないが,一般に牛1 頭でも1ha 程度の放牧地が必要とされるため,家族労働力だけで防火帯を作るとき放牧地の面積や頭数は自ずと限られてくる。しかし,防火帯や柵の維持を共同で行えば,その効率は大幅に増大する。図4 は輪地切を農家が個別に整備する場合と合同で整備