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コモンズ形成の原理と現代的課題31を2 種類(provider, producer)に分けて設定するといった細かな配慮がみられる。この点は,Hardin が提示した「コモンズの悲劇」とは対照的である。ただし,Ostrom の場合,人為ス....

コモンズ形成の原理と現代的課題31を2 種類(provider, producer)に分けて設定するといった細かな配慮がみられる。この点は,Hardin が提示した「コモンズの悲劇」とは対照的である。ただし,Ostrom の場合,人為ストックの形成をコモンズ形成の契機としては捉えていない13。これまでの議論を踏まえると,コモンズ形成は仮説的に図9のように整理できる。まず,家族単位の労働投入では効率的に生産性を引き上げることができない資源系がコモンズ利用の対象となる。その中で,共同で人為ストックを形成して単位当たりの空間(土地や海など)の生産性を引き上げることが可能なとき,ストック型のコモンズが形成され,そうでない場合には採取型のコモンズが形成される。いずれも構成員以外の利用の排除は大切であるが,前者の場合,すでに共同のストック管理のための組織が形成されているため,排除のための費用はさほど大きくない。これに対して採取型のコモンズの場合,資源の生産量を自然の回復力に依存しているため,利用の制限が生産力維持の主たる手段とならざるをえない。経済主体(漁家など)は沿岸域の海洋資源を守るために個別に排除活動をすることも可能である。しかし,図4 で述べたと同様の論理で共同で排除活動に従事した方が効率的であることは明らかである。そこで,排除のための組織が形成される。人為ストック型と採取型の違いは現代のコモンズ問題を考えるときに重要で13 E. Ostorm[14]は第2 章Reflection on the Commons において,コモンズの基本問題の発生や対処方法を簡単なゲーム理論を用いて整理しているが,議論の出発点はやはりHardin の提示した共有地の悲劇にある。労働投入(小規模)生産性の増大生産性は不変/微増労働投入(大規模)生産性の増大生産性は不変/微増図9 労働投入と生産性の分類注)筆者作成