097号

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32 高知論叢 第97号ある。草地などの人為ストック型のコモンズでは,利用が減少することで人為ストックの維持ができなくなり,ここから問題が発生する。例えば,牧野組合の場合,草地管理のために必要とされてきた....

32 高知論叢 第97号ある。草地などの人為ストック型のコモンズでは,利用が減少することで人為ストックの維持ができなくなり,ここから問題が発生する。例えば,牧野組合の場合,草地管理のために必要とされてきた放牧,採草,そして,火入れの作業は自然を適度に攪乱し稀少な動植物の生存環境を維持してきた。しかし,草地の利用が減ると草地ストックが縮小し,稀少な動植物も消滅してしまう。したがって,ここでは利用の確保が問題となる。また,水利施設についても,一部の農家が利用を休止すると水利施設全体が機能不全をおこしてしまいかねない。こうして第1 次産業の衰退とともに,過少利用問題を顕在化させるのが,人為ストック型のコモンズである。これに対し,採取型のコモンズでは過少利用は資源保全の意味からむしろ歓迎されるべき事態といえる。ただし,伝統的な資源の利用から逸脱する利用方法や外部からの新たな利用主体の参入があるとき,コモンズが排除型であっただけに旧来の利用組織と新しい利用者の間の調整は困難になり易い。組織を支える排除的な行動原理が,新しい状況への適応をむずかしくするのである。こうした事例は,沿岸域で漁獲高が低下するなかで,サンゴや亜熱帯魚などの観光業を生業としたダイビング業者が域外から参入する場合に現れやすい14。各地の沿岸域では,資源の新しい利用に相応しいルールの模索が続いている。5. むすびコモンズはこれまで排除不可能や競合性によって特徴づけられてきた。資源系の利用をめぐって激しい競合が発生する状況にコモンズは成立するという理解である。しかし,現実の草地や水利施設といったコモンズをみるとき,問題は資源系の過少利用であり,いかにして利用者を増加させるかが課題となっている。コモンズの理解と実態の間には明らかに齟齬が生じている。そこで,本稿では三瓶草地を事例に,コモンズの成立や現代的な課題の現れ方を資源系の改良可能性に着目して整理を試みた。事例は限定的であり,仮説の域をでない14 新保他[7]ではダイビング業者と漁業者団体の軋轢や問題解決に向けての過程が整理されている。