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コモンズ形成の原理と現代的課題33ものの,上記の逆説的な現象も含めて,コモンズを包括的に整理しうる枠組みは提示しえたと考えられる。とはいえ,資源系の共同利用を規定する要因はこれで尽くされたわけではない。....

コモンズ形成の原理と現代的課題33ものの,上記の逆説的な現象も含めて,コモンズを包括的に整理しうる枠組みは提示しえたと考えられる。とはいえ,資源系の共同利用を規定する要因はこれで尽くされたわけではない。たとえば,図9 において家族規模の労働投入で生産性が効率的に改良できないからといって,これらの資源系が全て私的に利用されないわけではない。資源系が生み出す資源単位の価値が十分に高ければ,この資源系は私的に囲い込まれてしまうだろう。また,共同で資源系の改良に取り組んでも十分な生産性の向上が見込めない場合には,資源単位の価値と他の利用者の排除に係る監視費用のトレードオフが共同利用の成否を決定することになる。こうした多元的な変数に基づいたコモンズの分類・整理は今後の課題である。他日を期したい。【引用文献】[1] (財)阿蘇グリーンストック(2008)『阿蘇千年の草地を守る』39.[2] 飯國芳明(2002)「三瓶牧野を支える倫理の転換」『高知論叢』第73号,pp. 167-196.[3] 小串重治,鎌田麿人(2008)「二次草地の再生を支える社会システムに関する研究.草地生態学」vol. 75, No. 1, pp. 885-892.[4] 斉藤政夫(1979)『和牛入会放牧の研究』,風間書房.[5] 佐藤誠(1993)『阿蘇グリーンストック』,石風社.[6] 小路 敦・山本由紀代・須山哲男(1995)「GIS を利用した島根県三瓶山地域における景域変遷の解析」,『農業土木学会誌』,第63巻,第8 号,pp. 847-853.[7] 新保輝幸・諸岡慶昇・飯國芳明(2005)「森のコモンズ・海のコモンズ(2)」『海洋と生物』第27巻,第6 号,pp. 579-587.[8] 千田雅之.(1997)「三瓶山周辺の和牛飼養の変遷」『中国農試農業経営研究』vol.122:pp. 70-105.[9] 東京大学農学部農政研究室(1957)『牧野利用の歴史的展開 三瓶山牧野利用の変遷』[10] N. グレゴリー・マンキュー著足立英之他訳(2005)『マンキュー経済学 第2 版 Ⅰミクロ編』,東洋経済新報社.[11] 多辺田政弘(1990)『コモンズの経済学』学陽書房.[12] 田和正孝編(2007)『石干見』,法政大学出版会.[13] Hardin, G.,(1968)The tragedy of the commons. Science. Vol. 1, pp. 1243-1248.[14] Ostrom, E.(1990)Governing the commons: The evolution of institutions forcollective action. Cambridge University Press.