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35 論 説海のコモンズの現代的可能性新  保  輝  幸  1. はじめに 地球上で最も生物生産性と生物多様性が高い生態系の一つである造礁サンゴ群集生態系の重要性は広く認識され,近年世界各地のサンゴ礁が....

35 論 説海のコモンズの現代的可能性新  保  輝  幸  1. はじめに 地球上で最も生物生産性と生物多様性が高い生態系の一つである造礁サンゴ群集生態系の重要性は広く認識され,近年世界各地のサンゴ礁がさまざまな危機に瀕していることもあり,その保全が叫ばれている。アジェンダ21以来,生物多様性保全条約(CBD)等のサンゴ礁保全に関する国際的な枠組は整備され,わが国においても様々な取組が進められている。豊かなサンゴ群集生態系が展開する「サンゴの海」は,水産資源涵養や遺伝資源,学問・教育上の重要性のみならず,そこに生息する多様な生物とそれらが形成する美しい水中景観が多くの人を惹きつける。特に近年,わが国においてスキューバ・ダイビングをはじめとする海洋レジャーが盛んになるにつれて,その生物多様性はレクリエーション資源として重要になっている。南西諸島や本州・四国・九州の黒潮沿岸域には,地域経済をツーリズムに強く依存し,サンゴの海が生活の基盤となっている地域も増えている。しかし,多くのダイバーがサンゴの海を訪れるようになり,ダイビングの頻度が増えるにつれ,地域によっては海中の生態系に無視できない影響が及んでいる。すなわち,ツーリズムによる過剰利用とも言える状況があらわれているのである。 通常の環境経済学の理解では,このような過剰利用は,資源の所有権(ないし利用権)を適切に割り当て,あとは資源所有者の最適化行動に任せる所有権アプローチで解決可能であるとされている。しかし,確たる所有権が成立して高知論叢(社会科学)第97号 2010年3 月