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36 高知論叢 第97号いない領域で新たに所有権を創設するというのは,それ自体さまざまな困難が伴い,実現が難しい場合が多い。 しかし近年,自然資源の過剰利用を抑制し,資源の持続的利用を実現する仕組みとして....

36 高知論叢 第97号いない領域で新たに所有権を創設するというのは,それ自体さまざまな困難が伴い,実現が難しい場合が多い。 しかし近年,自然資源の過剰利用を抑制し,資源の持続的利用を実現する仕組みとしてのコモンズが注目を集めている。すなわち,オープンアクセスになりがちな自然資源に関して,一定の利用集団が形成され(地域の地縁共同体である場合が多い),利用ルールを定めてその遵守を利用者に強制したり, 資源を十全に利用できるよう一定の管理を行ったりする事例が,地理的・歴史的にさまざまなバリエーションを以て観察されている。サンゴの海のツーリズムによる過剰利用を同様な仕組みで抑制し,資源を持続的に(すなわち生態系の自然特性を変化させないような方法で),かつ最大限の利益を引き出すような形で利用すること―サンゴの海のワイズユース―は可能であろうか(註1)。 本稿では,まずコモンプール資源(Common Pool Resources; CPRs)の性質を検討し,その議論からコモンズ成立に関わるコスト,ないしCPR の長期持続的利用のためのコストという分析枠組を提起する。そして,海洋自然資源の問題を検討する上でこの分析枠組が有用かどうかを確かめるために,歴史的に形成されたいくつかの漁場利用の形態の差違の分析にこの枠組を導入する。すなわち,海洋自然資源の資源としての特徴を踏まえ,漁場利用形態成立の歴史的な経緯を分析し,漁場の場合,コモンズのコストの中でも資源系の囲い込みコストが重要であること,漁場利用の権利の源泉たる漁場の用益事実,ないし利用実績の継続自体が囲い込みコストの投入に他ならないことを確かめる。その上で,高知県柏島のサンゴの海の利用に関わる問題を分析し,歴史的な用益事実を背景にもつ地域の漁業集団がサンゴの海の持続可能な利用の鍵を握るという点をを提起する。最後に,沖縄県恩納村と座間味村の事例を参照軸にして,サンゴの海のワイズユースに関して,伝統的な漁業コモンズの果たすべき役割を考察する。2. コモンズ成立に要するコスト(註2) コモンズにおいて利用の対象となる山野河海の自然資源―入会林野の薪炭や林産物, 草などの資源, 漁場や沿岸域の水産資源, 等々―は, ほとんどの場